No.163 優しい気持ちだけじゃ味方とは言えない
「あっ!ヒーローさんが……!」
「なにか策はないか……!?くそっ!私が不用意にここを離れたら、駅爆破の二の舞が起こる可能性も……どうすれば!」
同じようにルビーも、力を持っていながら何も出来ないこの状況に、苛立ちを感じていた。
奈留は罪悪感に苦しみながら、涙を流して手を伸ばすーー
俺の戦いを見つめながら、隣にいるルビーに想いを呟いた。
「私がヒーローさんを助けたい……!私はヒーローに、皆さんに……大勢の人に迷惑を掛けました……!それなのに私は……!何もできない……!」
「露草奈留……その気持ちだけあれば十分だ」
「気持ちだけじゃ……!何も救えません……!」
奈留は悔し涙を流していた。
それを通信機で聞いていた俺は、痛みを堪えながら言い聞かす。
«大丈夫だ奈留……!お前のその優しい気持ちが、俺の戦う力に変わるんだ……!お前がそこにいてくれるから、俺は何度だって立ち上がれるんだ……!言っただろ?俺はお前のその味方だって……!»
奈留を悲しませないようにーー
これ以上泣かせないようにーー
俺は必死に言葉を奈留に聞かせた。
けれど奈留はーー”味方”という言葉を聞いて思い知る。
「”味方”と言うのは……お互い守り守られる存在であるべきです……!」
張り裂けそうな胸を抑えながら、俺の戦いを遠目でしっかり見つめていた。
次の瞬間ーー
奈留の目に映ったのは、俺が早坂の用意した、無数のラジコン飛行機に取り囲まれる光景だった。
「あっ!ヒーローさん!!」
隣でルビーも必死に通信機に叫ぶ。
「逃げろビースト!死ぬぞ!!」
俺もそうしたいのは山々だったが、先程大門から受けたダメージが、俺の身体を鈍らせる。
いつも気弱で物静かな奈留だったが、その光景に大声で想いを叫ぶのだった。
「嫌っ!今度は私がヒーローさんを助けたい!!私もヒーローさんの”味方”なんだから!!」