No,161 1対2の危機的状況
通信機越しで聞いていたルビーが、すぐに離れていた愛菜を呼び戻す。
«大門だと……!?まさか奴が……!?メイジー聞こえるか!?すぐにビーストの援護に迎え!»
«は、はいルビーさん!ですがーー»
愛菜がその続きに何を言おうとするのか、俺たちは容易に想像できた。
ルビーは自分でも、無茶な事を言っていると自覚していた。
ーーこれこそが敵の思惑。
俺の目前で、大門が笑みを浮かべた。
「例の爆破予定地点ーーペットショップからこの青空タワーまで走って1時間はかかる。その時間があれば、お前を俺と早坂でミンチにできる」
大門の言うことはその通りと言えた。
ルビーは必死に策を考えるーー
«メイジーは足が速いとはいえ、やはり時間がかかる……!アメシストとエメラルドは小香の護衛で手が離せない!仮にアメシスト一人車を回したとしても、正反対の位置にいるメイジーを拾ってからになる……!早坂林太朗が他に街爆破の手段を隠し持っていないとも言えない状況の中、私は安易にここを動くと命取りになる……!»
淡々と策が崩れていく声が聞こえてくる。
ーー考えている暇無い……!
俺は気を引き締め、拳を構えて向かい合う。
「俺は一度あんたを倒してる……!ましてやそんな大怪我で、俺に勝てると思ってんの……!?」
「あぁ今度はもう油断しねぇ……!ちゃんと殺してやる……!早坂!」
名を呼ばれた早坂は、屋上隅に移動する。
そして隠していたリモコンを複数取り出した。
「へっへっ!弾け飛べ黒マント!」
早坂の器用な操作により、屋上のあちこちから、ラジコン飛行機の大群が取り囲むように出現した。
「なっ!これだけのラジコンをまだ!?」
俺はすぐに『マグネティックパルス』で全機不能にしようとしたーー
けれどもう一人の敵ーー大門がそれを阻む。
「よそ見してる暇あんのかアァ!?」
俺に急接近し、『マグネティックパルス』の隙を一切与えないラッシュを打ち込んで来た。




