No.160 戻ってきた憎き包帯男
「もう何も壊させねぇよお前には!奪わせはしねぇんだよ!俺がいる限りな……!」
「ふざけんな!何がオーディナルだ!てめぇらガキに邪魔されてたまるか!俺は今度こそ失敗する訳にはいかねぇんだーー」
早坂林太朗は焦る様に立ち上がった。
ーーこの人殺し不愉快サイコパス犯罪者は何を言ってるんだ……!?
俺が声を聞くだけでウンザリしていたが、早坂は構わず自分の都合を叫び続ける。
「ーーヘマやらしてサツに捕まった俺だ……!もう一度組に戻り、親父に認められるためには、例の『シークレットコード』とやらを持ち帰るしか手はねぇ……!それをてめぇら『オーディナル』が邪魔するから……!」
「そんな事のためだけに、奈留を利用して……大勢の人を巻き込んで……あぁ、分かった。お前はもう生きてちゃいけない奴だ……!」
奈留の泣き顔を思い出すーー
これ以上この男をのさばらせていたら、奈留のように苦しむ人が増える。
俺は拳を握りしめ、早坂目掛けて駆け出そうとしたーー
「そうだ……!邪魔すんじゃねえよ……!」
その声は唐突に俺の背後に現れた。
俺が振り返った時には、その声の男に殴り飛ばされていた。
ドガッ!!
鈍い音の直後、俺の身体は屋上フェンスに打ち付けられた。
「な、この声は……!?」
顔を上げると、そこには顔中包帯を巻いた、スーツ姿のヤクザが立っていた。
顔が隠れていたが、俺はその声をすぐに思い出したーー
ーー忘れるはずがない……!俺がやっとの思いで打ち倒した、花弁3枚ピンバッジを付けていた男……!
「お、お前は……!確か大門とかいう……!」
間違いないーー
以前小香を攫い、俺と直接戦った藤田組の男。
「覚えているか……!あの時お前に負けた俺は、組のピンバッジを取り上げられ、指を詰めさせられる始末だ……!」
襟に付いていたピンバッジが無く、左手の指が数本無くなっていた。
これがヤクザの厳しい世界だろうが、俺にとっては憎き敵の戯言に過ぎない。
「黙れ!お前らのせいで小香は……!」