No.157 密告者の想い
「迷惑なんて思わなくていい……それにお前は俺たちにヒントをくれただろ?」
「えっ!?ヒントなんて私……!」
身に覚えがなかった奈留は戸惑うが、ルビーが代わりに話す。
「駅でお前が、遠くの一点を観ていたのを覚えているか?あの危機的状況の中、超視力のお前の目に止まった物が何だったのか気になった」
「えっ……そんな事気になったんですか?」
「あぁ勿論だ。お前があの時観ていた物ーーそれは”青空タワー”だった。違うか?」
青空タワー。
以前までこの街一番の高さを誇り、人で溢れる観光地だった。
しかし新しいタワーの建設や、新たな観光地が周辺に出来たことから客足が激減。
今では閉鎖、放置され、荒れ果てた状態となっていた。
「そこに爆弾魔がいるのか?」
俺は真っ直ぐな視線で奈留を見つめた。
ここで奈留が早坂林太朗を裏切れば、お店の動物達が危ない。
肩を震わせて怯える奈留は、俺の問いに即答できない。
「……うぅ!」
マグネティックパルスの効果も、そろそろ限界時間ーー
俺はドンッと自分の胸に手を当てて、奈留の眼を見て強い想いを声にした。
「俺がお前を守ってやる!お前だけじゃない!お前の守りたい物は、もう俺の守りたい物だ!何も壊させない!言っただろ!?俺はお前の味方だ!お前の全部を俺に守らせてくれ!」
俺の叫びが奈留の心を掴んだ。
奈留の瞳に光が差し込んだような気がした。
ルビーがタイムリミットを読みあげる。
「あと10秒だ!マグネティックパルスの効果が切れるぞ!」
しかし俺たちにもう時間はいらなかったーー
奈留は頭を下げ、泣きながらも大声で俺に想いを叫んだ。
「お、おねがい……します!!青空タワー……!そこにあの男はいます……!!」