No.155 優しさを俺たちは分かっている
「よく聞いてくれ。奈留……俺達はお前の味方だ」
「み、味方……!?」
奈留は当然驚いた表情を浮かべた。
確かに俺達は、奈留が敵の”内通者”である疑いをかけ、それを暴いたーー
しかしーー奈留が犯人である疑いは一切持っていない。
「露草奈留……お前はーー」
ルビーはそう言いながら、奈留にゆっくり近づいた。
そしてーー奈留の制服のポケットに手を入れた。
「わっ!?る、ルビーさん!?」
「ーーこれがお前の、被害者である大きな証拠だ」
ルビーが奈留のポケットから取り出した物。
それは小さな電子機器だった。
ルビーはそれを見て、ひと目で判断する。
「C4爆薬……簡単なプラスチック爆弾だ」
一見これを持っていた奈留は、誰が見ても犯人である証拠となってしまうが……
俺はゆっくり奈留と向かい合い、その悲し泣く表情に言った。
「……どうしてこれをすぐに使って俺達を殺さなかったんだ?」
「そ、それは……!」
奈留は思い出すーー
駅の爆発で、大勢の人が犠牲になったこと。
震える奈留を優しく撫で、頷いて囁いた。
「俺とルビーの考えはこうだ。奈留……お前は、爆弾魔に脅されて動いてたんだよな?聞いたよ?駅で愛菜と一緒に、たくさんの人の手当てしてくれたんだって?お前が優しい女だってことは、俺達ちゃんと分かってる」
「う、うぅ……うわぁぁ……!!」
奈留は座り込んで泣きじゃくる。
もう涙は止まらない。
「もう怖がらなくていい奈留。盗聴器は一時的だがショートさせた。話してくれ俺たちに」
俺の横でルビーが、奈留のスマートフォンを拾い上げて様子を見た。
「ビースト……もうあまり時間が無いぞ」