No.154 内密に送られたメール
「いや、それはないよ奈留」
「どうしてです!?どうして私だけを疑うんですか!?」
「いいか奈留?よく聞いてくれ。あの時あの立体駐車場に行くことを知っていたのはーー俺とルビーと”お前”の3人だけなんだ」
「えっ……!?」
奈留はそれを聞いて唖然としていた。
返す言葉が無くなったんだーー
ルビーが残念そうな表情を浮かべながら、事態の説明を話し出した。
「私たちがアメシストのバンで、あのビルの屋上に逃げた時、『インビジブル』で透明化して逃げたにも関わらず、敵に発見されて攻撃を受けた。あの時点で”内通者”の可能性を考えていたんだ。だから私はビーストに、内密にメールを送っていた」
「メール……!?」
「あぁ、メールは《立体駐車場に向かえ。その事をこっそり、露草奈留にだけ知らせてみよう》ってな」
俺は初め乗り気はしなかった。
同じ学校の、愛菜の友達を疑うなんて真似はーー
けれどルビーの指示に従い、奈留の疑いを晴らすことが出来るならと。
ルビーの話を聞いた奈留は、溢れた涙を袖で拭って台詞を吐いた。
「……それって、初めから私を疑っていたんですねルビーさん……」
「……駅でのお前の言動が気になった。お前は真っ先に、音羽柚木の行方を慌てて尋ねていたな?人を気にかける優しい女だと言ってしまえばそこまでだが、あの緊急事態で他人の心配している場合か?あの幼馴染の愛菜でさえ忘れていたぞ?」
ーー止めろや……!泣きそうになるわ……!
などと口に出来ない鬱憤を、俺は咳払いで誤魔化した。
「と、とりあえず……奈留。お前は全部話してもらうぞ?」
「わ、私は……なんて事を……!」
再度泣きそうになる奈留だった。
ブラックアウトした自身のスマートフォンを見つめながら、これまでの行いを後悔した。
しかし俺は責めるわけでも、ましてや怒ることせずーー奈留の頭を優しく撫でた。
「よく聞いてくれ。奈留……俺達はお前の味方だ」