No.147 助けてあげないんですか?
「あの私、怪しい男に追われてるの……!」
かなり突然の言い草だった。
それにこちとら、只今絶賛爆弾魔に追われている。
「警察に言って。悪いけど俺たち急いでるんだ」
少し悪いとは思うが、俺は袖を振り払おうとした。
けれど何故か、後ろにいた奈留は、俺の手を強く握り返して思わぬ台詞を言った。
「た、助けてあげないんですか?」
「いや、お前自分の状況分かってる?こいつが誰にどう追われてるか知らないが、お前の今の状況の方がよっぽど深刻だ」
それにこの黄色髪少女の言うことが、どうも俺には信じ難い。
何者かに追われていると言いながら、表情や態度に深刻さを感じない。
今も当人はと言うとーー
「優しいね眼鏡っち!君はこっちの黒マントとは大違いだよー。ねぇねぇ君歳いくつ?よく見たら可愛いねー。何処の学校?スリーサイズは?今何色のパンーー」
鼻息荒らげながら奈留の腕を抱き締め、興奮気味で質問攻めを浴びせていた。
中身は少年っぽさを通り超え、やばいオジサンそのものだった。
俺は怯える奈留を想い、暴走する黄色髪少女を引き剥がす。
「いい加減しろお前!警察に頼るとか以前に、別の意味でお世話になれ!ってか追われてるって嘘だろやっぱ!」
「ちょっと!失礼だな君は!私はこの眼鏡っ子女子と仲良くしようとしてるの!」
「これで仲良くしてくれるのは、世界で警察官か裁判官くらいだ!法廷へ行け不審者!」
その台詞を聞いた少女は、喚くように更に抵抗を始めた。
俺の手を振り払い、再度奈留の身体を抱き締めるーー
今度は腕だけでなく、奈留の体全体に抱き掛かりーー奈留のふくよかな胸に顔を埋めるようにしがみついた。
「嫌だ嫌だ!私を連れてってよ黒マントさん!」
顔を擦りつけるように、首を左右に振って暴れ出す。
その光景はまるで、お母さんから離れたがらない幼い子供のようだった。
それを受けた奈留は、擦り付けられた感覚で、身体に電気が走ったかのような快感で声を上げる。
「あっ!ん、あぁ!ちょ、ちょっと……!」