No.145 カッコイイの意味
「俺がーー」
俺はいつの間にか、気がつけば奈留の手を握りながら、真剣な眼差しで言っていた。
「ーー必ずお前を守るから!絶対に!だから、後でその涙の訳を俺に話してくれ!」
「えっ!?」
当然言われた奈留は、突然の俺の台詞に戸惑った。
俺はそれだけ、奈留の涙の訳が気になってどうしようもなかった。
けれど今は、奈留を守らなくちゃならないんだ。
奈留を掴んだこの手は、何があっても離さない。
そう心に決めながら、奈留を連れて歩き出す。
「『オーディナル』は、必ずお前を救い出す!今は俺に付いてきてくれ!」
背中を見せながら、強く奈留の手を握り締めながらーー
人混みを掻き分けて進んで行く。
奈留は自分がいつの間にか、不安と涙が止まっていることに気がついた。
「……愛ちゃんがカッコイイって言ってる意味が、少しだけわかった気がします」
人混みにかき消される程小さな、少女の呟きだった。
ーー奈留を守る。
それだけを考えて、俺は手を引いて歩いていた。
「どこに向かってるんです……?」
「とりあえず外に出る!立体駐車場に向かってる!」
俺が目指している地点は、フロアの外に隣接する立体駐車場。
ーーとりあえず外に出る!ルビー達が外で爆弾魔と戦ってるはずだ……!
そこに近づくに連れて、人混みも少なくなっていく。
自動ドアが見えてきた所で、俺はスマホを取り出して、ルビー達に連絡を入れようとした。
直前のアパレルショップから突如ーー
帽子を深く被った人物が、勢いよく飛び出して来た。
「うわぁぁ!どいてどいて!」
とても急いだ様子で飛び出して、鉢合わせた俺とぶつかった。
「がっ!なっ!」
腕を引く奈留を巻き込みながら、体勢を大きく崩して倒れ込んだ。