No.144 ペットショップを見つめる女子高生の涙
「奈留……!?」
人混みの中、俺は急いで後ろを振り返る。
ついて来ていたはずの、奈留の姿が見当たらない。
少し戻って姿を探すが、人が多すぎて目が回る。
ーーえええ!迷子!?こんな時に!?
こんな時にーー
早速奈留の姿を見失った。
「やべやべぇ!奈留!?おい!何処だ!?」
人混みを掻き分けるように、来た道を戻りながら奈留を捜索。
ただでさえ影の薄い奈留だ。
捜索は絶望的な気がしていたがーー
その時、突如聞こえてきたその声に、俺は咄嗟に振り返ることとなった。
『ワンっ!』
それは甲高い、小型犬の鳴き声だった。
振り返るとーーそこはペットショップだった。
そして店頭ショーケースの前で、屈んで中の小型犬をまじまじと見つめる奈留の姿があった。
「奈留!」
俺はすぐに名を呼んで、急いで奈留の元へ駆け寄った。
振り返って俺を見た奈留の表情はーー何処か悲しそうな、静かに泣き崩れた表情だった。
「……ヒーロー様」
「ど、どうした!?泣いてたのか!?」
「ご、ごめんなさい……!」
一言謝ると、立ち上がって涙を袖で拭いた。
その涙は、何か悲しみを抱えたような……そんな気が俺は直感だが思った。
「……怖いのか?」
「……それもあるんですけれどーー」
奈留はそう言いながら、再度チラッとショーケースの中の小型犬に視線を戻した。
「ーーいえ、何でもないですよ」
その真意は分からなかったが、今はーー
「俺がーー」
俺はいつの間にか、気がつけば奈留の手を握りながら、真剣な眼差しで言っていた。