No.143 ただの女子高生なんですけど!
「分かってないなぁビースト君。この車は爆速で都会の街を駆け抜けるんだよ?」
「だから何だよ!?」
「つまりこの車は敵はおろか、街中の人々から注目を浴びるんだ。つまり君一人と行動した方が安全なんだ」
ルビーがバタンとドアを閉め、その後ろで愛菜がひょこっと顔を出し、申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ありませんヒーロー様……奈留ちゃんをよろしくお願いします……」
ブルルルルル……!!
アメシストが車を発進させ、泣きそうになる奈留を構うことなく空を飛んだ。
「ま、待って愛ちゃん!私無関係の一般人だから!!」
奈留の声は届くこと無くーー車は街の中に消えて行った。
「な、奈留……」
「わ、私……ただの女子高生なんですけど!」
「……お前ほど不運な女子高生はいねぇよ」
※
ーーそれから1時間後。
露草奈留と行動を共にする。
エレベーターで適当なフロアに降り、奈留の腕を引いてズカズカと歩く。
様々なショッピングモールが立ち並び、沢山の人で賑わっている。
流石は日曜日と言ったところだ。
このビルだけでファッション全般から、雑貨や食料品まで全て揃っている。
丸一日使っても、おそらく全てのお店を歩き回るのは難しそうだった。
当然俺たちは男女2人組ではあるが、決してデートに来た訳では無い。
「俺から逸れるなよ?ただでさえ人混みで、うまく前が見えねぇんだから……」
この建物には以前、愛菜に連れられて訪れた事があった。
あの時も確か、かなり歩き疲れたのを覚えている。
いくら人混みとはいえ、さすがに黒仮面と黒マント姿は目立つかな……なんて考えながら、足を早めようとした所でーー
片手の違和感に気がついた。
握っていたはずのーー奈留の手が見当たらない。
「奈留……!?」
投稿更新は1日1話に戻りますが、短編同時連載の準備していますのでお楽しみに!!
これからも応援よろしくお願いします!!