No.140 2番スロットーーインビジブル
エメラルドが外の景色を見て、ニヤニヤと続けて言った。
「けれどアメシスト。流石にこのまま飛び続けるのは不味いんじゃない?もう既に色々と手遅れな気がするけれど、一般人に見られ続けてたらーー」
「そうだったです!忘れてたですーー」
言われて気がついたアメシストは、急いで音声認証でアプリを起動させた。
「ーーI Say。音声認証モード」
次の瞬間、再びセットしてあったスマートフォンが、ピピっと音を鳴らして点灯する。
続けて音声入力で、離れたスマートフォンのアプリを起動させる。
「ドライブアプリ起動。2番スロット」
『アプリケーションーー”インビジブル”』
その瞬間ーー
車のシートやボディ含めた車体全てと、俺達の身体全てがーー光学迷彩のように透明に色を失った。
「うぎゃぁぁ!!」
シートや床が透明になり、真下が筒抜けとなった途端、隣にいた奈留の悲鳴が増す。
しかしこれで、一般人からの視線は気にしなくてすむ。
奈留の悲鳴は大空を飛んだ。
こんな常識からかけ離れた状況の中、唯一怯えていた奈留の反応が常識であり、俺は改めて、この連中の横暴さを再認識した。
※
30分後。
ここは超高層ビルの屋上部。
本来ヘリポートとして使われているこの場所に、今は黒いバンが何食わぬ顔で停車していた。
ゲームか何かだったら、時々バグか裏技で高い所に呼び出す事があるが……
今は現実にそれが起きている。
車をビルの屋上に運ぶ事など、それこそ巨大ヘリコプターのようなもので吊るすくらいだとは思うが……
まさか自分で飛んでくるなんて、誰が一体予想するだろうか。
「モタモタしてる暇はないぞ。敵は間違いなく、私達を狙ってる」
透明化アプリーー”インビジブル”が解けた後。
車を降りて、真っ先に話を切り出したのはルビーだった。
今後について話そうとした所で、再度それは俺達を襲うように飛来した。
「また来ました!ラジコン飛行機です!」
愛菜が飛来するラジコン飛行機に気づいて声を上げる。