No.137 ドライブアプリ
「心配いらないよ。アメシストに走れない所はないんだ。まぁ見ていろ」
先輩であるルビーの口から出た台詞。それを聴いたアメシスト。
表情を思わず赤面させ、困ったように恥ずかしがるがーー
「は、ハードル上げないでくださいですぅ!」
口では弱気なことを言う、メイド服姿のアメシストだったがーー
手足の動きは、エージェント”Jewelry”の動き。
隣に座るエメラルドが、ニシシと笑って俺たちに言う。
「流石に、今度はどこかに捕まっておいた方がいいよ」
アメシストがここから、俺たちに構うこと無く動き出すーー
胸元からシック風デザインのスマートフォンを取り出した。
そして口元に運び、マイクに向かって声で起動。
「I Say。音声認証モード」
その瞬間、スマートフォンがピピッと光って反応。
アメシストの乗りこなすこの車はーー覚醒者のスマートフォンに対応している。
運転席と助手席の間には、シフトレバーやハンドブレーキが設置されている部分の”センターコンソール”と呼ばれる部分がある。
けれどこの車には、他には無い縦長に空いた穴があった。
アメシストはその穴に、スマートフォンを縦にして差し込んだ。
「スマートフォン、セットです」
ガシャッ!
次の瞬間、ハンドル裏のダッシュボードに、青白く光るCGが浮かび上がった。
それはアメシストの音声認識によって、様々な形に変化される。
「ドライブアプリ起動。3番スロット」
3番スロットーーアプリケーション起動。
『アプリケーションーー”フレアデコイ”』
ダッシュボードのCGが、花火に似たアイコンに形を変える。
次の瞬間ーー車体前面のヘッドライトが開き、小型のミサイルが発射。
「この車は落とさせないです……!私がこの人達を、きちんと安全に送り届けるんです!」