No.132 惨劇の光景
数分後。
外で様々な情報操作を行っていたエメラルドと通信が繋がり、その指示のもと、警察の手薄な裏道から駅の外へ脱出した。
それでも外は凄い野次馬の数だった。
交通整理や事件捜査に追われる警察や、負傷者の搬送に手を焼く救急隊。
その光景はとても現実とは思えない、事件の悲惨さを物語る。
「私たちも運が悪かったら、今頃……!」
愛菜がもしもの恐怖に怯えながら、震える思いでそう口にした。
しかしそんな中、近くで停車していたパトカーの一台から、警察無線の音が聞こえてきた。
ザーッとノイズが混じった、レシーバー越しの若い女の声。
« 本部より入電。ただ今入った情報。爆破現場による、負傷者は100名以上ーー»
改めてそれを聴いて、俺たちは胸が苦しくざわついた。
「酷いな。絶対許さねぇ……!」
これを引き起こした爆弾魔に、激しい怒りを燃やす。
ブルルルルル……
とても小さく聞こえてきた、まるで虫の羽音のような、プロペラ回転の音。
それがビルの上から俺たちめがけて、こちらに落下するように近づいてきた。
振り向くとひと目でわかる、市販されていそうなラジコン飛行機。
車体が斜めに傾きながら、真っ直ぐこちら目掛けて落ちてくる。
「ラジコン!?」
すぐに超視力を持つ奈留が、その妙な違和感に気がついた。
飛行機がふらふらとしている原因のそれ。
「あれ?あの飛行機何か詰んでます」
それを隣で聴いたルビーが、胸中をざわつかせ、すぐさま咄嗟に行動に移した。
「何っ!?まさかっ!」
了承を得ないまま、俺の襟を後ろから掴んで引っ張った。
「なっ!?」
俺の身体を後ろに放り投げながら、続いて急きスマートフォンを取り出した。
手帳型カバーを開いて、アプリをタップして起動ーー
『アプリケーションーー”ナノハンドガン”』