No.126 夏代海斗と名乗る漢
「ヒーロー様!無理しないでください!その体じゃ、とても戦うなんて……!」
このボロボロな身体で戦闘続行は不可能なのは、当人の俺がいちばんよく分かっていた。
だから尚更、俺は自分自身の弱さに悔しかった。
そんなやり取りを見ていたルビーが、俺の前に出て、夏代目掛けて銃口を向ける。
「お前達こそ、この状況を理解しているのか?そんな身体のお前なら、私とメイジーの2人で片が付く」
「はっ、分かってねぇなぁ女ーー」
夏代は呆れ顔を浮かべて、そんなルビーに臆することなく物申す。
「そこのスーパーヒーローのガキは、サシで俺に戦いを挑んで、そして負けたんだ。その意味をよく考えてやれ」
夏代の台詞に、ルビーと愛菜は首を傾げて黙り込むが、俺は少し動揺した。
なぜならその台詞は、以前小香を襲った他の『藤田組』の連中からは、到底出ないような他人を想う気持ちだったからだ。
「あんた一体……」
「まぁ今の俺でも、お嬢と2人ならお前ら全員倒すなんざ訳ないが」
そんな夏代の強気な台詞に、嬉しくなったスノウが前に出た。
「私と夏代、最強チームです……!」
次に夏代は俺に言い残す。
「俺の名は夏代海斗。お前名前は?」
急になんだと言いたいが、先に名乗られたからには答えたい。
「……ナンバー・ビーストだ」
「ビーストか……覚えとくぜ。その勇ましい名前に見合う男になってみろ」
最後まで上から目線で言い残し、スノウを連れてこの場から去っていった。
俺も肩の力がすっと抜け、”エージェント”以外のアプリケーションを全て解除して落ち着いた。
少し離れた所で、ニヤニヤと笑みを浮かべて歩く夏代。
右腕をふらふらと、不自然に垂らしていたそれを見て、スノウが心配そうに見つめて言った。
「……夏代。どうしてニヤニヤしているの?その右腕……」