No.125 今の俺は……
バチッと火花に似た電流音がした直後、俺の身体はーー音速を超えて移動する。
まさに電光石火。雷の速度。
瞬間移動の如く、夏代の頭上で右脚を振りかざしていた。
『雷帝ーーサンダーバード』
その技は名前の通り、雷を起こすと言われる巨大な鷲。
まるでその鷲が襲い掛かるかのように、夏代の頭上で蹴り払う。
俺ーー音羽柚木の持つアプリケーションは、7色の属性のうち”黄属性”の色を持つ。
”黄属性”は全属性の中で、最もスピードの特化した属性。
「なっ!?」
意表を突かれた夏代は、咄嗟に両腕で身体を庇うがーー
「落ちろ!」
俺の脚は雷の蹴り。
直撃させた瞬間、激しい雷鳴が轟いた。
ズガァァン!
直後俺と夏代の両方は、あまりの衝撃に身体が吹き飛び、お互い瓦礫に強く打ち付けた。
「がっ!」
それを見ていた愛菜とスノウは、それぞれの方を心配して追い掛けた。
「ヒーロー様!」
愛菜は倒れる俺に駆け寄って、抱き上げるように膝に乗せて涙した。
同じように夏代の元へ駆け寄っていたスノウは、先ほどまで激しい攻防を繰り広げながらも、落ち着いていた雰囲気のスノウとは一変ーー
泣き崩れた、普通のか弱い少女の姿がそこにあった。
「夏代……!夏代……!」
抱き抱えながら、何度も何度も名前を呼んだ。
「……お嬢」
夏代がゆっくり目を開けると、目の前には泣き崩れたスノウの表情があった。
左手でそんなスノウの顔を触り、涙をそっと指で拭った。
そしてそのまま、スノウの綺麗な白い髪を撫でながらーー
「何、泣いてんですかいお嬢……?俺はこんな事でくたばるタマじゃねぇですよ?」
「夏代のバカ……!大バカ……!夏代までいなくなったら、私……!」