No.123 新しい力
俺と対面する夏代は、同じ覚醒者のスノウが近くに居るから分かっていた。
これが新しい力ーーアプリケーションの出現だということに。
ここで初めて、夏代の表情に焦りが生まれた。
「新アプリ!?何が出るか分かんねぇ!くそっ!離れろてめぇ!」
俺を焦って強引に蹴り飛ばし、自身も後ろに跳んで距離を作る。
けれど何故か、衝撃や痛みよりも、今は目の前の夏代への敵意が収まらない。
愛菜やルビーの元まで蹴り飛ばされたが、振り返ることなくすぐに体制を戻す。
「ヒーロー様!?大丈夫ですか!?」
「ありがとうメイジー。下がっていてくれ。ちょっと今ーー負ける気しないんだ」
そう言ってーースマートフォンを取り出した。
躊躇うことなく、未使用のアプリケーションにも関わらず、俺は新規アプリアイコンをタップした。
『アプリケーションーー”ライトニングスピード”』
俺の攻撃が、”電光石火”に加速する。
バリバリッ!
暴れた電撃の音と光が、俺の足元に集まった。
そして俺の両足にまとわりつくように、一気に電流が駆け上がる。
「俺はお前を超えていく……!」
次の瞬間。
両足の電流が弾け飛び、機械でできた黒ブーツに姿を変えたーー
膝まで伸びた、金属製の強襲ブーツ。
これもまたSF映画を思わせる、ブーツ全体の構造がロケットエンジンようなブースター機構。
俺は真っ直ぐ夏代を睨みつけ、じっくり体制を落としながらーースタンディングスタートの構えをとった。
夏代がそれを見て、両腕を開いて戦闘準備。
いつ俺が何をしても対応できるよう、全身に神経を研ぎ澄ます。
「……大方想像はつく。脚の装備なんざ、大体蹴りか突撃か。まぁどっちにしろ、間合いに入れなきゃ怖くも何ともーー」
そこまで言ったところで、瞬く間に状況が一変した。
バチッと火花に似た電流音がした直後、俺の身体はーー音速を超えて移動する。