No.122 どんな敵も倒せる力
「あんたに一発、クリティカルヒットを打ち込んでやる!」
接近した俺が繰り出した一撃目は、左拳でいきなり額を狙った左フック。
当たれば吉。
けれど本命は、相手を動かすための布石。
予想通り夏代は俺の左拳を、右に体制を落として躱す。
「あぁ?だからいきなり頭狙うかよ?! 」
続けて俺の攻撃ーー夏代の落とした体制に追い討ちを狙うように、右掌を真っ直ぐ伸ばし、電流混じりの手刀を振り下ろす。
「逃がすか!」
「逃げねぇよ俺は」
殺気を込めた台詞を吐いて、俺の右腕の内側を掴んで受け止めた。
そして夏代は右膝で、俺の腹部に激しい蹴りを打ち込んだ。
ズダン!
凄まじい打撃音が響き、俺の意識が落ち掛けた。
「がっ……!」
そんな俺を後ろから見ていた3人は、同じ悲痛の表情を浮かべるがーー
秋雨だけは、まるでスポーツ観戦を楽しむ様に、笑顔で仲間の夏代の戦いを楽しんでいた。
「へへっ、いいぜもっとやれよ。どうせならそのまま一緒にくたばっちまえよぉ……」
ボソッとそう呟いて、誰にも気づかれず、一人この場から去っていった。
今の俺にはどうでもいい。
この男ーー夏代を超えて強くならないと。
俺は小香や皆を守れるくらいーー
どんな敵も倒せるくらいーー
「俺は強くないといけないんだよ……!あんたなんかに負けるかよ!」
俺の脳内は、妹の小香の笑顔でいっぱいだった。
もう二度と失いたくないから。
手放さないから。
俺はこの男を超えていく。
小香を守りたい気持ちがーー俺に新たなアプリケーションを生む力をくれた。
内ポケットに入るスマートフォンが、まるで神々しい光を放つ。
それを見ていた全員が驚愕して、ルビーは真っ先に思わず言った。
「ビーストあいつ……このタイミングで、新しいアプリ覚えたのか!?」