No.121 戦闘再開の睨み合い
「奈留ちゃん……!救援が来た!?」
それを聞いた敵ーー秋雨は、舌打ちを鳴らして口惜しがる。
「くそっ!サツがもう来やがったか……!お嬢!残念だがズラかります!」
撤収の提案に、スノウは迷うこと無く頷いた。
そして遠くの夏代に指示を出す。
「夏代。帰りますーー」
けれどスノウの声は届かない。
声は聞こえない距離ではないが、夏代の瞳に燃える闘志は、余計な音を遮断する。
様子がおかしい夏代に、スノウは不安を募らせた。
「ーー夏代……!?」
夏代は真っ直ぐ俺を睨み続け、台詞を吐き捨てる。
俺たちはーーやる気だった。
「……来いよ!」
「ぶっ倒す!」
俺は叫びながら、一気に夏代目掛けて駆け出した。
右手グローブの、雷鳴はバチバチと鳴り響く。
俺たち二人を除く全員が、予期せぬ戦闘開始に驚いた。
「おいビースト!?何やってる!?止めろ!」
「ヒーロー様!?止まってください!」
ルビーと愛菜の叫びは、当然俺の耳には入らない。
「夏代止めて……!もう終わったから……!」
しかし夏代も、スノウの声に反応すること無く、構えの体制を見せる。
俺はその夏代の構えを、一瞬で脳内に叩き込む。
空手によく似たーー脇を引き締め、拳をギュッと握る基本の構え。
隙がなく、逆にこちらの小さな隙に打ちこんでくる構えだ。
けれど負けるつもりは毛頭ない。
「あんたに一発、クリティカルヒットを打ち込んでやる!」