No.116 ビーストが負けた!?
俺の左腕を掴み返し、ぐるっと回って俺の全身を背中に乗せた。
そしてすかさず繰り出したのはーーまるで子供扱いの背負い投げ。
夏代は素早いはずの俺の連撃を簡単に捌き、投げ飛ばして片付ける。
今まで相手にしてきた、他の藤田組の連中とは比べ物にならない強さだ。
背中を地面に打ち付けた俺に、夏代は見下したように笑って言った。
「おい少年、よーく聞けよ。お前は確かに世界最強のガキと言っていいかもしれねぇが、所詮はガキの世界での話だ。そんなんじゃあ俺に打ち込むなんてできねぇぞ」
「な……何!?」
「お前の攻撃は一見多彩だが、やはりコンボの締めを、その”右手グローブ”に頼ってる節がある。それさえ分かってれば、お前の動きは手に取るように分かる」
俺はそれを聞いて、悔しさで気が狂いそうになった。
そんな戦いを目の前にしていたルビーが、焦って大声を上げた。
「ビーストが負けた!?そんな馬鹿な!”エージェント”で強化だってしてるはずが!」
それを愉快そうに見ていた男ーー秋雨紅葉がゲラゲラと声に出して笑う。
「残念だったなー。お前のナイトは見ての通り、ただの役立たずなガキだったってわけだ」
好き勝手言うこいつらに、ルビーは怒りを燃やしていた。
「黙れ……!」
それでも当然止まるはずもなく、秋雨はここに来たもう一つの目的を口にする。
「それとーー『シークレットコード』って奴は何処だ?知ってんだろ?洗いざらい吐いてもらうぜ?」
『シークレットコード』ーーやはりここでも、その単語は登場する。
しかしシークレットコードについて、詳しく知らない俺たちは、何も言い返せる筈がない。
「何故そこまでシークレットコードを追う!?お前達は何か知っているのか!?」
「へへっ。シークレットコードはまさに”パンドラの箱”だぁ。この世界に災いが巻き起こる。けれど聞いた話じゃ、世界を思うままに創り変える力があるってらしいぜ?まぁ、姿形は知らねぇが、とりあえず音羽小香ってガキを渡せ」