No.112 不気味に笑う黒いサングラス
「なぁ、ルビー?少し冷えないか?」
ルビーは妙だと思って顔を顰めるが、すぐに辺りを見渡して確認した。
本来メラメラと燃え動く筈の炎が、微動だにしてなかった。
「この炎……もしかして!」
ルビーが近くの炎に手を近づける。
当然俺はそれを見て、思わず大声を上げる。
「おい危ねぇ!火傷するぞ!」
けれどルビーは一切熱がる様子はなく、そして次の瞬間ーー
文字通り、固まった炎に手を触れた。
パキッ。
炎が折れ、高い音が響く。
折れた炎を握って砕き、スマホを構えて俺の隣に近づいた。
「どういう事だ……!?炎が凍ってる!」
「えっ!氷!?」
「こんな現象は初めてだ!気をつけろ!何かが来る!」
ルビーの警戒通り、凍った炎の向こうからやって来た。
それは突如、炎を蹴り砕いて現れる。
「おらぁ!邪魔するぜぇ!」
荒々しく現れた、身体が大きく鍛えられた中年の男。
黒いサングラスを掛け、不気味に笑う怖面の表情で続けて言った。
「テメェか?ウチのシマ荒らした黒マントってのは。写真よりよっぽどガキじゃねぇかおい!」
この場合のシマという単語は、おそらくヤクザ用語で縄張りを意味する。
そんなの、心当たりは一つしかない。
男の容姿から、疑う余地もなく連想する。
「『藤田組』!?なんでここに!?」
俺の隣で、すぐさまルビーが銃を構えて威嚇する。
「そんな事よりだ!おいお前!ヤクザがどうしてこんな所にいる!?」
ルビーの銃口がギラリと睨む。
けれど男は一切怯えることなく、むしろ愉快そうに高笑いを上げた。