No.111 女々しいことはもう終わり
「もう一度言うが、お前は立派な奴なんだ。他人の気持ちを知ろうと、努力しようとする凄い奴だ。でなきゃーー『オーディナル』なんてチームが生まれるはずが無い」
更に続きを言いながらゆっくり俺に近づいて、トンっと頭を優しく撫でるルビーがいた。
「お前達が、今までたくさんの人を救って来たのを、私は側で見てきた。けれど確かに、今回のお前達はーー初めての”失敗”だ」
「……”失敗”」
俺はその言葉を噛み締める。
救えなかった多くの命に、押し潰されているかのようだった。
けれどルビーは俺を慰める。
同時に、強い想いで励ました。
「お前は強い奴だ音羽柚木。私は知ってる。けれど立ち止まってる暇はないだろ?お前がぼさっとしてたら、更に多くの人間が死ぬんだ」
それは絶対に死んでも嫌だ。
もう誰も傷ついて欲しくない。
「そんな選択肢……ぶっ壊したい」
「だったらやれる事を全部やるんだ。どんな小さなことでもいい、後で悔いがないように、一生懸命希望の選択肢を探し出せ。『オーディナル』はその力を持っているんだろ?私にその力を見せてみろ」
俺はそれに強く頷いて、同じようにスマートフォン取り出した。
「めそめそ女々しい事言うのはもう終わりだ!俺も一緒に手掛かり探す!何したらいい!?教えてくれ!」
「一刻も早く犯人に繋がる手掛かりを探し出すぞ。またいつどこを爆破させるか分からないからな」
「またこんな事が起こるかもしれないって言うのか……!?」
「当然だろ。未だ犯人の目的が分からないんだからな」
だったら尚更、一刻も早く手掛かりを見つけないとーー
俺はスマートフォンのカメラ越しで、事件現場を写したところでーー妙な違和感に気がついた。
今でも炎が、あちこちで轟々と燃え広がっているがーー
けれど俺たちの周辺だけ、その炎がとても奇妙だった。
アプリケーションーー”エージェント”の能力のお陰もあったが、先程からそういえば、全くと言っていいほど辺りの”暑さ”を感じない。
いやむしろ、今となっては肌寒ささえも感じていた。
「なぁ、ルビー?少し冷えないか?」