No.109 メイジーの顔
「ビーストは指示があるまで攻撃系のアプリを使うな。もしこれがガス爆発事故なら、お前の電気は引火の恐れがある。私も、いざという時しか撃たない」
俺は心を落ち着かせて、ルビーの後をついて行く。
少し振り返り、任を伝えて後にした。
「愛菜はその子や他の負傷者の避難を頼む!後で連絡を入れる!」
「はい!分かりました!ヒーロー様はお気を付けて!」
言われた愛菜は、真剣な表情で頷いて、俺ーービーストの言伝をしっかり胸に刻む。
奈留の手を優しく握り、安心させようとニコッと笑う。
その表情は既に、赤髪愛菜を超えたーーナンバー・”メイジー”の顔になっていた。
「大丈夫だよ奈留ちゃん。私達が必ず助けるから」
「愛ちゃん……貴方達は一体……!」
その頃俺の方はーー
銃を構えて進むルビーを先頭に、荒れ果てた瓦礫の上を歩いていた。
かなり酷い有様で、瓦礫の上はとても脆く、辺りは廃や粉塵が舞っている。
「これじゃ……事件か事故かなんて分かるわけ……!」
袖で口を覆いながら、手掛かりを慎重に探す。
”エージェント”で身体強化され、多少の熱に強くなっているが、それでもやはり爆心地の近くはかなり熱い。
いつ天井や壁が崩れるか分からない。
それに素人の俺は、一体何が手掛かりなのかさえも分からない。
しばらく歩いた所で、ルビーが爆心地の予想ポイントを探り出した。
「……この辺だな」
ホームに面する、駅舎待合室ーーと思われる場所。
焼けた待合室の看板が転がっている。
その場所は、酷く地面が抉れていた。
ルビーが辺りをキョロキョロと見渡して、何かを探し始めた。
何を探しているのか質問しようとした所でーー俺の足元に転がっていた、不自然に焼け残った”金属片”と、”プラスチック片”が目に止まった。
「……これは?」
俺の声にルビーは反応した後、すぐさまそれに飛びついた。