No.108 事故か事件か
黒い炎が俺を包み込み、”ビースト”の黒マントと黒仮面が姿を現した。
ビーストになった俺は、急いで駆けるように現場へ向かった。
そんな俺を見て、愛菜は思わず驚いて立ち上がる。
「えっ!?ひ、ヒーロー様!?」
”ビースト”となった俺を、愛菜は別人の認識をしているのは慣れたことだ。
そんな事より、言えなかったルビーの返答を、”ビースト”となった俺の口から言ってやった。
ーーまだ終わってねぇ。生存者がたくさん残ってるぞ。そうだろ?
「何度だって言ってやる!全部助ける選択肢だ!」
それを目前で聞いたルビーは、やれやれと言いながら、隣のエメラルドに指示を出した。
「エメラルド。お前は、一応構内の防犯カメラを当たってくれ。お前のアプリがあればいけるだろ?」
するとやはりエメラルドは、やる気ゼロで言い返す。
「えーやだよ。結構面倒なんだよあれ。それにこの件はウチらJewelryの管轄じゃないじゃん」
「いいからやれ!」
威圧したようにルビーが言うと、エメラルドは渋々スマホを取り出して去って行った。
いい年した大人が、非常時にも関わらず駄々をこねている姿に、なんだか情けなさを感じた。
けれどすぐに俺は切り替えて、ルビーに問う。
「防犯カメラ?」
「何か手掛かりが見つかるかもしれないだろ?それに、今回の爆発はーー事故か事件か、ハッキリさせる必要がある」
「事件……だったら」
「当然、犯人の目的を炙る必要がある。でないと、これと同じ事が再び起こる可能性がある」
『アプリケーションーー”ナノハンドガン”』
掌サイズの、3インチバレルのハンドガン。続けてルビーは、冷静に俺に事を伝える。
「ビーストは指示があるまで攻撃系のアプリを使うな。もしこれがガス爆発事故なら、お前の電気は引火の恐れがある。私も、いざという時しか撃たない」