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帰還

最終話です。

「さて、これで勇者様ともお別れですね」

 俺たちはセレスティア教会神殿に集まっていた。おおむね世界は平和になり、やることは山積みだが俺の武力が必要となる事態はもう起きないだろう。そして準備が整い、ついに俺は送還されることになった。

「長かったような短かったような」

「うん。あのとき助けてくれてありがとう」


 リアが出会った時のことを懐かしむように言う。ちなみにリアは実質的には人類を救った英雄の一人であるものの、天使と人間のハーフが露見すると嫌だという本人の意向により、教会でひっそりと暮らしていた。何かそう言われるとなろう主人公みたいだな。

「いやいや、たまたま通りがかっただけだ」

「でも、寂しくなっちゃうね」

 リアにとって秘密を共有しているの俺とイリスだけ。今後もしかしたら誰かこの世界の人と仲良くなって打ち明けることがあるかもしれないが、今は俺が知り合いの二分の一である。俺だってもし二人しかいない友達の片方がアメリカに引っ越すとかなったら寂しくなるだろう。

「……」

 俺は何て言葉をかけていいか分からずに沈黙する。さすがに軽々しく「きっと他にも秘密を話せる仲間が出来る」とも言えないし、「じゃあずっとこっちにいるよ」とも言えない。いや、待てよ? 向こうに戻ってもどうせガチャ回して講義を受けたりさぼったりするだけの毎日だし、別にわざわざ二分の一の仲間と別れてまで戻らなくても……


「こほん、そろそろ準備も出来ましたよ。帰ってもらわないと私最強レアリティになれないんですが」

 そんな俺の悩みを断ち切るようにイリスが咳払いする。そうは言いつつもイリスの目は少し充血していた。それを見て俺もイリスの意図を察する。

「ごめん、寂しいのはイリスも一緒だったね。私だけ我がまま言ってごめん」

「は? 別に寂しくなんてないですが? 本音で早く帰って欲しいって思ってますが?」

 鬼の形相でリアに食って掛かるイリス。いや、気持ちは分かるけど何もそこまで言わなくても。

「ああ、うん、それならそれでいいや。ほら、イリスが寂しくなる前に帰ろう」

「何か最後までいつも通りで安心した」

「じゃあ、準備しますよ」

「おお」


 イリスが儀式に使う正式な礼装(十二単衣みたいで重そうなローブ)に着替えてくると、俺は言われた通り教会広間の複雑な魔法陣が描かれた床に立つ。そう言えば召喚されたときもこの上だったな、と懐かしい気持ちになる。

「準備はいいですか?」

「ああ」

「本当に? やり残したことがあるなら今が最後のチャンスですよ?」

「いや、大丈夫だ」

「でももしかしたら何かあるかもしれません。もう一回考えてみては?」

「ちょっとイリス、さっきと立場逆転してるって」

 たまりかねてリアが突っ込みを入れた。コントか。この光景を第三者視点で見てたら爆笑してた自信がある。

「すみません、ちょっと不安になってしまって。では始めます」

 気を取り直してイリスは厳かな表情で詠唱を始める。本当にこうやってまじめに仕事してると別人だな。

「全くもう、せっかく私が気持ちの整理をつけたって言うのに」

 リアがため息をつく。が、イリスの逡巡もそこまでだった。ようやく魔法が起動し、俺は魔法陣から発された白い光に包まれる。

 最後に俺は二人に向かって手を振った。光の向こうに二人の顔が見える。最後だからか、笑顔で手を振り返してくれた。

「「「お元気で」」」

 期せずして三人の言葉が重なる。

 大学を適当にさぼりつつガチャを引く生活も悪くはなかったが、せっかく笑顔で送ってもらったんだからもう少しだけ頑張って生きてみようか。そんなことを思いつつ、俺の意識はホワイトアウトした。


最後までお付き合いいただいたみなさん、ありがとうございました。

完結直前にちょっと話を挟んだり、途中色々直したりしたのでリアルタイムで読んでくださった方は微妙に違和感があるところもあるかと思います。申し訳ありません。

書きたい内容は書いたんですが、人間関係の描写とかはもうちょっと丁寧に直したいという気持ちもあります。

何はともあれありがとうございました。

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