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結末

 集中砲火を浴びて広がった爆炎の中から現れたのは満身創痍の神だった。闇の矢に副作用があったのか、ところどころに呪いの紋章のようなものまで浮かび上がっている。

「げほんげほん! よくもやりおったな……しかしそちらの聖遺物は尽きたようだ。そしてメテオストライクも無限に撃てるという訳ではないだろう」

 神はまだ負けるつもりはないようだった。まあ、正直これだけで勝てるとは思っていなかった。だからセレスティア教会ほどの切り札ではないが、こちらにもカードは色々用意してある。

「おいおい、LRになったのに俺の攻撃手段がSSSRのときのメテオしかないって本気で思ってるのか?」

「何だと……?」

 神の表情が初めて変わった。


「ブラックホール」


 突如神の真後ろに虚無の穴が開く。その穴の中には何もなかった。ただの空洞ではなく、完全な無。無は近くに“有る”物で無を満たそうと猛烈な吸引力を発する。

 俺は右手でリアの手を、左手でイリスの手を握る。周りにあったものは次々とブラックホールに飲み込まれていく。台風の中外を歩いているときのような勢いで教会のものが飛んでいく。散らばっていた瓦礫も、噴水の近くに立っていた石像も。だがそれでも神は超人的な脚力で地面に踏みとどまっていた。そこで俺は背負っていた杖の存在を思い出す。

「リア、この杖使っていいぞ。俺の持ち物だからCとかUCってことはないだろ」

「はい、スリップ」

 杖が消滅する。同時に神の足元の地面から摩擦が消滅した。


「うわあああああああああああああああああああああああ!」


 神は悲鳴とともに虚無の穴に吸い込まれていった。俺はそれを確認して魔法を終了する。あれほど猛威を振るった神ももはや痕跡すら残されていなかった。だが、これはちょっと不思議なことかもしれないが神がいなくても世界には何も異変がなかった。


「ああああああ!」

 突然イリスが大声を上げる。

「どうした?」

「これじゃ神の遺体で概念魔法を使ってもらって私が最強になる計画が!」

「まだ言ってるのか」

「いや、冗談はさておきレアリティとかいう概念消滅させたかったんですよね。ぶっちゃけいらないじゃないですかこの概念。私は最強レアリティになりたい訳じゃなくて最高権力者になりたいんですよね」

 珍しくイリスの言葉にリアが感動している。

「イリスにしては珍しくいいことを言うね」

「と言っても、もうそんなにすごいものなんて残ってないだろ」

「それは残念だけど、この後イリスが出世して王様か何かになればいい」


 イリスが今後のこの世界の政治がどうなるかは分からないが、近隣の王国全部を統べる王とかになって、それを代償に概念魔法を使えばレアリティという概念を消滅させることも出来るかもしれない。想像もつかない話ではあるが。

「え、私王になってそれを自分で消さないといけないんですか」

 イリスは露骨に嫌そうな顔をする。

「うん」

「まあ、消すかどうかは王になってから考えますよ」

 すごい未練たらたらであった。大丈夫か? 王になるだけなって消さないんじゃないか?

「王にはなるんだな」

「実際問題、王という形かは分かりませんが。多分誰かまとめ役みたいな人が現れないとこの世界収まらないと思いますよ。という訳で勇者様もしばらくは手伝ってくださいね」

「えー、まだ帰れないのかよ」

 口ではそういうものの俺は手伝う気ではあった。


 イリスの言う通り、世界は乱れていた。まずアルトニア王国が光の環に権力を委ねて光の環が消滅。教会は援助を申し出たがその教会も消滅。当然旧教会領に周辺国はこぞって兵を出そうとしていた。そしてその中にはアルトニアも含まれていた。ちなみに俺たちと神の戦いのごたごたは魔王軍残党による奇襲ということで処理された。これ絶対陰謀論出るだろ。陰謀論者もまさか神を倒したとは思うまいが。

 その後イリスは教会領に集まって来た国の者たちを集めて会議を開いた。いや、会議というよりはイリスが話すだけの独擅場だった。その場でイリスは言った。


「神託があり、神様はしばらくお休みになられるとのことです」


 大半の人々は“光の環”事件やカタストロフの話は聞いたことがない。なので認識としては「魔王討伐の次はこれか」ぐらいの認識であった。

「とはいえ、魔王も無事討伐しましたし大きな問題はないでしょう。神様が次に目覚めたときに安心されるような世の中を皆で作っていきましょう」

 イリスの演説に心を打たれた人々は拍手喝采であった。何でだよと思ったら再び最上級魅了を使ったらしい。まあ、この世界の政治については口を出すまい。

 ちなみにイリスが政治的な駆け引きをしている間、俺がやっていたのは各国の軍勢に対して「教会領の中で戦ったら領地にメテオ落とす」と一言呟いただけである。

 さらにイリスはアルトニアに新生教会の資産で食糧を支援する隙に、ちゃっかり『大臣補佐』という謎の肩書を手に入れていた。教会のトップだけでは飽き足らず、内政干渉まで始める気のようである。こうして、魔王討伐から始まったもろもろのごたごたはいったん収まったのである。

一応次で最後の予定です。

本当はイリスはリアを新たなる神に祭り上げる予定だったんですが、本人が嫌がったのでこういう形になりました。

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