リアの出生
「そういえばイリスは神官だろう?」
「そういえば? 私のアイデンティティをそういえば程度にしないでもらえますか」
「ほら、いつもレアリティの話しかしないし」
めっちゃ不服そうな顔をしているが、言動が全く神官じゃないからな……
「神官だったら神の声とか聞こえるんじゃね?」
この世界の世界観がよく分からないので俺はイメージで口にしてみる。するとイリスは雷に打たれたような表情になった。
「…………と、当然ですよ! セレスティア教会の頂点に君臨するこの私が神の声程度聞き取れない訳ないじゃないですか!」
イリスは一拍の間を開けてそう言った。本当に聞きとれるのか、という疑問よりも色々突っ込みどころがある。
「今神の声を程度とか言ったよな」
「こほん。では私は斎戒沐浴して祈りを捧げて来るので」
そう言ってイリスはそそくさとその場を離れる。何かこの前も似たようなパターンを見た気がするが、まあいいか。
「勇者様って意外と鬼畜だね」
リアの口から不似合いなワードが飛び出す。
「え、俺何か言ったか?」
「うん。神官でも神の声なんて滅多に聞こえるものではないので。まあでも本当に一切聞こえない訳ではないからイリスさん無理って言えなかったんだろうけど」
リアが同情的な表情を浮かべる。そうか、俺の神官に対する雑な認識は誤っていたのか。
「……ああ、まあでもそれで聞こえるんなら儲けものだし」
イリスは性格は悪いが能力は高いしやる気を出せば大概のことは成し遂げるイメージがあるので、とりあえず乗せておけばいいというところはある。
「その間また暇になるな」
「本当だね。ところでカタストロフのことを知って疑問に思ったんだけど」
「何だ?」
「私ってカタストロフではどうなるんだろうね。そしてこれは前からなんだけど、私は一体何者なんだろう」
リアはかなり重々しい口調で言った。
「あー」
リアは何気ない表情で言うが、根本的な疑問だろう。しかもカタストロフで神がレアリティで人を選別しようとしている以上、レアリティにはやはり何かの意味があると思われるし、レアリティの存在しない人物の存在というのは偶然ではないのだろう。
「何か手がかりとかはないのか?」
「さあ……。二人と出会うまでは主体的に何かをしようっていう気持ちにならなかったからね」
「そう言えばリアの御両親は?」
「ああ、私捨て子だからその辺よく分からないんだよね」
めっちゃ何かありそうなんだが。絶対こいつ出生関係で何かあるだろ。むしろ今まで誰もそれを解明しようとしなかったのか、と思ったがレアリティ不詳をレアリティ最弱か何かと思われていたんだろう。
「絶対そこに何かあるだろう!」
「じゃあ、せっかく暇だし私の拾われた村行ってみる?」
「そうだな」
もしかしたらリアの存在に何か重大な意味があるのかもしれない。イリスがまた文句言いそうだな、と思いつつイリスが祈っているらしい部屋のドアに書置きを残して俺たちは神殿を出発した。




