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平穏

「……楽しかったですか」

 教会に帰るなり、俺たちはジト目のイリスに出迎えられた。

「うん、楽しかった」

 そんなイリスの空気に気づいているのかいないのか、無邪気に答えるリア。そしてご丁寧にも一回ターンして新しく買った服を見せつけている。女子っぽい感性を手に入れたのはいいが、空気は読んで欲しい。

「私がずっと古文書を解読している間に二人でしていたショッピングは楽しかったですか?」

 イリスも通じていないと思ったのかわざわざ言い直してくる。

「いや、だってほら、リアももう大魔術師なんだからいつまでも借り物の装備って訳にもいかないだろ」

 俺は建前的な言い訳を口にする。嘘ではないが、最後は全くそういうのを考えずにおしゃれを楽しんでいた気がする。

「確かに……魔法耐性を上げる装備とは選ぶ目がありますね」

 イリスはリアの服を見てぐぬぬと歯ぎしりする。そうか、これは魔法耐性を上げる装備なのか。全然気にしていなかったが、リアの魔法が強化出来るようなものなのか不明な以上、防御を装備で補うというのは理に叶っている。


「まあいいでしょう。今度私とも行きましょうね」

「へ?」

 何気なく漏らしたイリスの一言に疑問を呈するとイリスもへ? と返してくる。

「イリスもそういうのに興味あるのか?」

「……私だって一応女子なのに失礼じゃありません?」

 イリスは不本意とばかりにこちらを睨みつけてくる。俺の中でこいつは女子というくくりにカテゴライズされてなかったのだが。

「いや、いつもローブだし、てっきり権力と名誉にしか興味がないものかと」

「それは仕事中だからです。私だって私服ぐらい持ってますよ。それに権力と名誉ほどじゃないですがおしゃれにも興味があります」

「そ、そうか」

 そうかとしか言いようがないんだが。とはいえ、イリスは常に神官ローブなので私服姿を見た記憶がない。


「ちなみに私服っていつ着るんだ?」

「……宿舎に帰ってから」

「部屋着じゃねえか」

「……地位がある人間ほどプライベートは少なくなるんですよ」

 何か悲しい現実を知ってしまった。

「何かごめん、私ちょっと浮かれすぎてた」

 唐突にリアが同情する。

「それはそれで傷つくんですが。……まあいいです、今度一緒に買いにいきましょう。それで許してあげます」

「分かった分かった、一緒に行ってやるよ」

 俺の言葉にイリスは少し嬉しそうな顔をする。

「本当ですか!? みんな私のレアリティに気を遣って正直な感想を言ってくれないので、率直な感想が聞けると嬉しいです」

「お前も大変なんだな」

 今まではいい性格としか思っていなかったが、彼女は彼女で色々苦労があるらしい。そしておしゃれの楽しみを知ったリアも盛んに同情している。

「大丈夫、今度私も協力するよ」

「ありがとうございます」

 こうして俺たちは不穏な影のことも忘れて穏やかなひと時を楽しんだのである。

部屋で一人ファッションショーとかしてそう

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