ガーランド砦奪還戦②
「敵襲ーーー!!!」
ぐっすり眠っていた俺は、見張りの兵士の怒声で飛び起きた。
周りで寝ていた部下達も何が起きたかわからずに混乱しておたおたしている。
天幕から顔を出して外の状況を確認すると、外ではもう戦闘が始まっているようで、味方兵士が次々と迎撃に向かっている。
「俺たちも出るぞ!」
混乱する部下達に急いで装備を整えさえ外に出ると、火球がいくつか飛んでくる。
「魔道士もきてやがるのか…」
それを楯で防ぎ敵軍に突進する。
全体強化+脚力集中強化の状態で踏み出すと周りの風景を置き去りにするような速度が出た。
敵の編成は騎兵、魔道士、そして奥に弓兵。
「光剣生成」
右手に光属性を帯びたロングソードを生成し、速度を維持したまま周りの敵兵に斬りかかる。
敵兵はローブを着ているか、馬に乗っているかなので味方との区別がつけやすい。
全体強化へのリソースを少し軽くして、脚力と腕力同時強化へと移行する。
騎兵は馬ごと真っ二つになり、魔道士も同じように半分になる。
抵抗がほとんどないな。
スルリと切れる。
止まることなく走り回り敵兵を吹き飛ばしていくが、一向に減る気配が無い。
「どんだけ居やがんだよっ、くそがっ!」
視界は敵で埋め尽くされている、一人で突っ込んでしまったせいで、随分と敵軍深くに来てしまったようだ。
四方八方から魔法やら突きが飛んでくる。
強化はしているが、楯で防げなかった攻撃で徐々に傷ついていくのがわかる。
引き返してもいいが、手柄がねぇ。
手柄を立てて金が欲しいから出てきたのに、手ぶらで帰ルナは面白くはねぇなぁ。
だったら敵の親玉みたいな奴を探して狩ればいいんじゃ無いだろうか。
視力を強化して偉そうな奴を探す。
「見つけたぞ!どきやがれ雑魚どもぉ!!」
再び脚力を全力で強化し、楯を前面に構えて目標を目指して疾走する。
後ろから滝のように攻撃魔法が浴びせられるが適当に障壁を作って最低限防ぐ。
「なんだ貴様!おいお前ら、盾になれ!向かってきている奴を討ち取れ!!」
こちらに気づいた敵司令官が周りにいた部下連中に喚き散らす。
「止めて見やがれ!!不可視化!」
「なっ…!?どこに行った!奴を探せ!」
姿を消した俺は進路を変えて、目標背後の守りの薄いところに向けて走る。
「がぁぁ!」
斬りかかる直前で不可視化を解除し、背後から敵司令官を縦に叩き斬る。
そして無理やり剣の軌道を変えて自分を中心に半円形に護衛達を一閃する。
「司令官の首!ガルドレイル帝国魔道小隊達長ゼノンが貰い受けたぞ!!」
司令官の半分になった死体から首を引きちぎって、剣の先に刺して掲げる。
一瞬、周囲が静まり返る。
しかしーーー
「殺せぇ!」
「囲んで潰せ!奴は一人だぞぉ!」
全然戦意を失っていない。
指揮官を失うと士気が下がるのでは無かったのか。
爺さんに騙されてしまった。
「仕方ねぇ、上手くいくかはわからんが…」
周囲をぐるりと囲む奴らのうち、味方方向にいる奴らの方を向く。
「光砲」
拳はどの直径を持つ光の束が、示した方向を薙ぎ払う。
軌道上にいた敵兵は何処かしらを円形に欠損して血潮を撒き散らしながら崩れ落ちる。
半分になった首を抱え込んで、機を逃すまいと包囲に穴の空いた場所に楯を掲げて突進。
そして後ろからの攻撃に障壁で対処しながら、味方のいる戦場に帰還するのだった。
◆◆◆
「隊長が一人で突っ込んでいっちまった!」
「俺たちどうすりゃいいんだ!」
残された隊員達は乱戦になっている戦場で、離れ離れにならないように固まって戦っていた。
全員が初級の攻撃魔法なら使用できるので、迫ってくる騎兵は馬を狙って落馬させ、飛んでくる弓と魔法は楯を掲げて防ぐことで、なんとか一人も欠けずに持ちこたえている。
「うぅ…ここで死んじまうのかなぁ俺」
弱気なことを言う奴もいる。
だがこの俺、ドルトンは我らが隊長が戻って来るまでもちこたえりゃあ大丈夫だと信じている。
最初に声かけた時には、こんな殆ど死刑みたいな作戦をやらされる隊で希望に満ち溢れた顔してたあいつの事は頭のおかしい奴だと思った。
だが二週間過ごしている間に、本当に生き残れると信じてるってことがわかった。
俺だって子供ん時から魔法はわりかし得意な方で、身体強化があるから喧嘩も負けなしだったがこの作戦を生き残る自信なんてなかった。
強いといっても所詮一般人の域。
戦争での殺し合いなんざ自身があるわけねぇ。
でも死にたくねぇから二週間必死に、今までの人生で一番必死に魔法を鍛えたが、隊長にはまるで敵わなかった。
いくつ魔法が使えるのかはしらねぇが、近くにいるだけで圧力を感じたぐらいだ、相当な魔力量なんだろうな。
隊長は金が欲しいと言っていた。
金を貰うには手柄を立てなきゃいけねぇ。
今回突撃していったのは、そう言う事なんだろうよ。
もしかしたら敵将の首でも持って帰ってくるかもしれねぇな。流石にそりゃねぇか。
「おいドルトン!なにボケっとしたんだ!」
「おお、悪りぃ悪りぃ。何かあったか?」
「何かじゃねぇ!前見てみろよ、何かがすげぇ勢いでこっちに近づいてくるぞ!」
見ると、砂埃と血飛沫をあげて一直線にこっちに向かってくるやつがいる。
敵兵に隠れて顔はよく見えねぇがーーー
「おーい!ゼノンだ!敵じゃねぇ!」
やはりか!
それにしてもすげぇ見た目だ、敵兵の地で身体中赤黒い上に、楯の内側に血だらけの首なんか抱えてやがる。
「はぁ、はぁ、体力がやばい。少し休ませてくれ…」
かす
戻ってきた隊長を後ろに囲うように陣形を整える。
「何処いってたんだよ隊長!一人で行くなよな、怖くて仕方なかったぜ」
「で、その首はなんだ?まさか敵将を討ち取ったのか?」
「あぁ、悪りぃな。夢中になってたらつい深くまでいっちまった。この首か?そうだぜドルトン、運良く見つけたんで頂戴したのさ」
運良く、か。
魔道国の指揮官クラスは殆どが魔道士でかなり強力なはずだ。
護衛もいただろうし、出会っちまったら運は最悪だろうに。
「そりゃ良かったな、だがそろそろ魔力が切れてる奴も増えている。少し休んだら加勢してくれ」
「おう、守るだけなら敵の攻撃なんざとおさねーよ」
まったく心強いこった。
隊長が戻って士気の上がった隊員は、味方の軍勢が態勢を立て直して敵軍を追い返すまで、なんとか犠牲を出さずに耐えきった。
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