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力を得たクズの好き勝手ライフ  作者: せっしょーまる
一章:人になる
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新設魔道小隊

 軍基地の窓口で兵団に志願したいと伝えると、簡単な質問を受け、軍の施設の一つに案内された。


 質素な部屋の中には300人ほどの男女がいて、それぞれがどこか緊張した顔持ちをしていた。


 1人だけ希望に満ちた顔をした俺は少し浮いてしまっているようだ。


「やっぱり、俺たちには無理だよ…!」


「そうだよ!俺なんか魔法が使えるったって、手から少し火が出せるくらいで、戦うなんてできねぇよ!」


「俺はそよ風しか起こせねぇ…死にたくねぇよぉ」


 聴こえる声から推測するに、この部屋には魔法が使える者を集めているんだろう。


 俺も先程、少し魔法が使えると答えたのでここに連れてこられたわけだ。


 少しの間近くの壁に寄っかかって待っていると、もう2、3人連れてきた兵士から伝言が伝えられた。


「今からお前達に、第十兵団長様からお話がある!広場に集まれ!」


 第十ってなんだよと思ったが、殆どの兵団は戦地に赴いており、帝都の治安を守るための兵以外は留守なのだろう。


 俺たちがぞろぞろと訓練場の広場に向かうと、一段高い位置に偉そうな服を着た偉そうな金髪のおっさんが立っていた。


 そのおっさんは嫌らしい目つきで、でっぷりと肥えてた豚のような男で、とても戦などできそうにない。


 司令官だからそれでもいいのかもしれないが、団長がアレの団では部下の士気もあがらなかろう。


 豚が唾を飛ばして叫ぶ。


「諸君!私はガルドレイル帝国第十兵団団長、マルロイ=デーブナーである!今日はよく集まってくれたのである!知っての通り我が国は今、厳しい立場に立たされているのである!魔道国の卑劣なる不意打ちによって領土深くまで侵攻を許し、このまま停戦すれば領土を大きく失ってしまうのである!だが、我が国の領土に居座る魔道国軍を撃退するには力が足りないのである!」


 家名があるということは貴族なのだろう。


「此度の戦、敵国の組織する魔道兵団の存在が大きいと陛下は御考えである!よって諸君ら魔法の才ある者を集め、我が国も魔道兵団を組織することを決めたのである!諸君らの力を持って魔道国の豚どもに目にもの見せてやるのである!!」


 豚はお前だろ、と言いそうになったが堪える。


 豚…兵団長は壇上から降りて満足そうに帰っていく。


 しかしこの人数で対魔道国戦が有利になるのだろうか?

 魔道国の魔道兵団は質もそうだがその数が脅威だと聞いている。


 決して300人やそこらじゃなかったはずだ。


「今日から二週間、貴様らには基礎的な魔法の鍛錬をした後に、五個小隊および民兵五百人と共に新設魔道小隊として援軍に向かってもらう。陛下は貴様らに期待されている!最前線で戦える栄誉を賜るのだ!光栄に思えよ!」


 兵団長の横にいた偉そうな騎士がそう言うのを聞いて周りの奴らはガクガクと震え出す。


 徴兵されていった者達は直接敵軍と矛を交えるものもいるが、そこまで多くない。


 常備軍の兵糧を運んだり、食事を提供したり、治癒術師に見せる前の負傷兵の応急処置をしたりと、非戦闘系の役割を担うものの割合が多い。


 治癒術師は貴重なので、戦時は殆どが徴兵されて後方で朝から晩まで治療を行う。


 俺は治癒術が使えるが、後方で治癒などは御免なので治癒は使えないと言ってある。


 ともかく、後方に回されず前線で実験的に運用され使い潰される魔道小隊に配属されることになった民達は自分の未来の暗いことを悟って絶望しているわけだ。


 俺は全くそんなことはない。


 手柄を立てるには前線しか無いと思ったので、自らの意思で戦おうというのだ。


 俺たちは元の大部屋に戻されて、早速魔法訓練をやらさせることになった。




 ◆◆◆



 教官として入ってきたのは、草臥れた老人だった。


 退役した兵士だというその男は風の刃を生み出す風刃(ウィンドカッター)という魔法が使え、身体強化により少しだけ頑丈らしい。


 質問があれば聞くと言うので、他の魔法は使えないのかと聞いたが、魔力がそれほど多く無いので初級である風刃(ウィンドカッター)を2、3発撃つのが精々なのだと言う。


「他に質問は無いようじゃな。それでは魔法について説明していこう」


 そう言って老人が人々を見渡すが、皆一様に暗い顔で俯いている。


「はぁ…仕方ないとはいえ、活気がないのう。まぁ良い、魔法には火、水、土、風、光、闇の六大属性と破壊、創造の双極属性があるのじゃ。それぞれその属性には関連する効果のある魔法以外に、全属性共通で使える魔法として、武器顕現と防具顕現、そして障壁がある。これらの魔法はそれぞれの属性の特性を持つ武器、防具、障壁を作成することができる。効果時間があり、武器と防具には一般の物に比べかなりもらいと言う弱点がある上、消費魔力量が多いので使えるものも少ない。」


 そうなのか。


 俺は治癒と光線とか諸々が使える…てことは光属性だな。


「双極属性は使えるものが非常に少ないので分かっていることは少ないが、従魔を生み出すことが出来るらしい。魔道国の魔道士を遠目から見た兵が司令官らしき魔道士と共に攻撃を放つ魔物らしきものを確認したとの報告がある。」


 双極は縁がなさそうだな、俺は従魔なんぞ作れん。


 その後は魔法訓練の方法を伝えられ、各自で訓練期間中毎日続けるように言われた。


「ああ言い忘れておった。訓練に使用する魔法は身体強化じゃ、これは全員が使えて周りに被害も出ないからの。では頑張るのじゃぞ」


 部屋に残された俺たちは訓練を始めた。


 暗い雰囲気だが、身体強化は生存率が上げることができるので皆熱心に訓練している。


 しばらく訓練をしていると昼の鐘が鳴り、兵士がやってきて簡単な昼食が配られた。


 メニューは固い黒パンとクズ肉入りのスープ、干し肉、後は水一杯だ。


 こりゃあ豪勢だ。


 スラムではこんな綺麗な飯にありつけることなんて無かったし、干し肉なんてこの前奪ったやつを食べるのが初めてだった。


 軍に入って早速一ついいことがあったなと思っていると、近くに座っている男が話しかけてくる。


「あんたもまだ若いのに災難だな…」


 いつもおっさんって言われてたのに不思議なこった。


 正確な歳はわからんが数えた限りじゃ二十六だし格好も綺麗にし、髭剃って髪も整えたから若く見えるようになったのかも知んねーな。


「災難って、何がだよ?」


「おいおい、何がってそりゃお前、前線に送られることに決まってんじゃねぇか」


「ああ、それなら俺にとっちゃ別に災難じゃねーぜ?活躍すれば金ももらえるしなぁ」


「だがよ、多分死ぬぜ?俺たち。帝国は苦戦してるから、なんでも試してみようってことで魔道士なんか集めて戦わせようってんだぜ?魔道国の魔道兵団とは違う。俺たちは素人だろう。まともに戦っても勝てねぇよ…」


「死ぬつもりはねぇ。奴らが魔法使えるか知んねーが、身体強化してりゃ死ぬほどの傷は負わないと思うんだよなぁ」


 実際、全力で身体強化した状態で少しずつ高いところに飛んで、そのまま落ちると言うのをやってみたが、時計塔の高さから落ちてもダメージはなかった。

 身体強化はかなりの防御になるはずだ。


「俺たちの魔法とは威力がちげーよ!あいつらは小さい頃から魔法訓練してる精鋭なんだと。俺たちがちょっとやそっと体頑丈にしたとこで殺されちまうよ!」


 話していて怖くなったのか顔を青くしてまくし立てる。


 だが、そうか。

 確かに相手がどのくらいの魔法を撃ってくるかわからんなぁ、俺の光線(レイ)を基準にしてたら痛い目見るかもしれねぇ。


「そうだな…よし!ならもっと身体強化の強度を上げなきゃな。午後からも頑張るか」


「前向きだなぁ、まぁそうだな、暗い顔してても気が滅入るだけだしな、ありがとよ!少し元気が出たぜ」


 魔力は使えば使うほど増える。


 一度に増える量は元の魔力量にもよって変わるが微々たるもんらしいが、確かに増える。


 魔力量が増えれば身体強化もより強か行える。


 だから当たり前のことを言っただけで元気付けたつもりは無いんだがな。


 午後もひたすら身体強化を繰り返し、魔力が尽きると、配給された夜飯を食って寝た。



 ◆◆◆



 二週間経った。


 生き残るためには強くなるしかないと割り切ったのか、暗い顔のやつは減ったように思える。


 俺も四つほど新たな魔法を習得した。


 ただ一つは被害が大きそうで室内で使うことが出来なかったので、習得はしたが使ってはいない。


 他のやつらの様子を見ていて思ったが、俺は中々魔力の多い方なのではないだろうか。


 習得可能な魔法の個数は、保有魔力に比例する。


 魔法の習得条件の一つは、生活や戦闘の中で問題に直面した時に強く願うこと、又は魔道書や人伝てなどで魔法を認識し、頭の中で魔法文字(スペル)を思い浮かべること。


 もう一つは上記の条件のどちらかを満たした上で、その魔法を行使する魔力を持つ事。


 教官のじいさんが言っていた。


 俺はすでに身体強化を除いて、十の魔法を行使できる。


 周りのやつは身体強化を除いて多くて五つ、少ないやつは一つだけ。


 魔道士になって二ヶ月も経たないのに不思議な事だが、多い分にはいい。


 それだけ強く、それだけ好き勝手に振る舞えると言う事なのだから。


 しかしここで周りに自慢しても良いことなどないし、反感を買うだけだろうしそんなことはしない。


 そんなことを考えていると、扉が開かれ、俺たち全員の視線が集まった。


「全員、訓練場に集合しろ!」


 いよいよだ。















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