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力を得たクズの好き勝手ライフ  作者: せっしょーまる
一章:人になる
3/9

覚醒と格闘(前編)

1話と2話の間の話。主人公視点です!

 なんだか知らないが、俺は生き延びたようだ。


 ギリギリ生きてる感じじゃなくて、とっても元気で今すぐ体を動かしたくて仕方ない。


「俺は何を食っちまったんだろうなぁ?」


 なんだかピカピカしててこのスラムじゃ見たことない色合いだった。

 お貴族様や商家のボンボンはいっつもああゆうもんを食ってるんだろうか?


 まぁ、なんにせよ俺は生き延びた。

 今はそれで万事オーケーだ。


 あれを食ってからすこぶる調子のいい体を見てみると、前とは随分と変わっているように見える。


「ははっ、こりゃスゲーや」


 さっきまで動かすことすら億劫だった俺の枯れ枝ボディは今やキュッと締まった形のいい筋肉で覆われている。


 ムキムキってわけじゃなく、良い塩梅だ。

 纏っていた襤褸をたくし上げてぽっこりと膨らんでいた腹を見てみると、こちらもまた綺麗に六つに割れている。


 そして、見た目以上に変わったのは湧き上がってくるパワーのようなものを感じることだろうか。


 俺が食ったあれはどうやらとんでも栄養食だったようで、周りをフヨフヨと漂うよく分からないものを知覚できるようになっている。


「なんだこれ…綿毛みてーだが触れねぇ」


 薄ぼんやりとしたそれに手をかざすと体温が少し上がるような感じがした。


 今度はもう少し力を込めてみる。


 ちょっと力むと屁が出そうになったが、別段何も変わらなかった。


 さっきかざした方の手から温かくなったのを思い出して、今度は片方の手に周りのフヨフヨを吸い寄せるようなイメージでやってみた。


 するとその手が温かくなり、少しの間そうしていると頭に言葉が思い浮かんだ。

 無意識にその言葉を紡ぐ。


「(光線(レイ))…うおっ?!」


 かざした手から白色の強い光の束が放出され、前の木箱を貫通して地面に小さなを開けた。


 驚いて後ろの木箱に足を引っ掛けて倒れた。


「こりゃ、魔法ってやつじゃねぇのか?」


 スラムには魔法を使うやつなんてもちろんいないが、魔法というのは色々な不思議現象を引き起こすもんだと聞いたことがある。


 手から光が飛び出して地面に穴開けるなんてのは不思議現象で間違いない。


 だが、気のせいということもあろう。

 確認のため、もう一度やってみることにする。


「(光線(レイ))…おおっ!!」


 もう2回目なのでビビらない。

 光は地面に突き刺さり、小さな穴を開けるとフヨフヨに戻って霧散した。


「こりゃあ使えるぞ、ギアネスの野郎どもにはお礼をしてやんなぁと気が済まなかったんだ」


 スラムにはいくつかのグループが存在する。

 その一つに、俺を標的にして寄ってたかって袋叩きにし、折角手に入れた飯を奪っていく奴らがいる。


 ギアネス兄弟とその一味である。


 奴らは俺のいた六人のグループと特に仲が悪く、俺たちのうちの三人がたまに巡回に来る警備兵に難癖をつけられてストレス発散に殴り殺されたのを良いことに事あるごとに食べ物を奪おうと襲いかかってくるようになった。


 そのせいで俺以外の二人は餓死、残る俺が標的というわけだ。


「今の俺なら、殺れるにちげぇねぇ」


 この、魔法っぽい力を使えば奴ら五人くらい相手にできるはずだ。


 それにもう、このスラムとはオサラバしようと考えているので当面の路銀と戸籍登録料が欲しかった。


 あいつらは十人だが、一人一人そこそこ腕が立つので周りの奴らを集団で襲い、食料やら小銭やらを溜め込んでいるはずだ。


 ギアネス兄弟の拠点に向かう。



 ◆◆◆



 奴らの拠点が見えるボロ小屋の陰に隠れ、様子を伺う。


 心なしか明瞭になった視界で観察する。

 …昼間っから酒まで飲んでやがる、俺から奪った飯を食ってバカ笑いする奴らに殺意を感じる。


 隠れたままギアネス兄弟の片割れの頭に狙いを定める。


 いくら魔法が使えるようになったからって俺は素人だし、十人を正面から相手にしたって勝てるとは思えない。


 だから遠くから始末できるだけ始末して、俺を見つけて追っかけてきたら、逃げながら残りを始末するという完璧な計画を立てた。


 学はねぇ俺だが、とっさにこんなにも完璧な計画を思いつくとは自分の頭脳が怖いぜ。


 そうと決まれば実行するまで。

 よーく狙いを定めて、発動の言葉を紡ぐ。


「(光線(レイ))」


 狙った通りに一人の頭を打ち抜き、霧散する光。


 奴らは仲間がやられ慌てるが、突然のことに何が起きているか分からないようだ。

 もう一人くらい行けそうだな。


「(光線(レイ))」


 もう一人も後頭部から光が突き抜け、前に倒れ込む。


 流石に暴力を生業にするだけあって状況のまずさに気づき、無理やり落ち着きを取り戻したようだ。


 そして、こちらに気づく。

 だが、まだ距離があるので、隠れたままもう一発。


「(光線(レイ))」


 ちょっと焦ったせいで今度のは腹に穴を開けるだけで殺しきれていない。

 そいつは腹から血を流してのたうちまわっている。


 俺をさんざん痛ぶった奴の無様な姿に思わず笑みがこぼれる。


「テメェ!ゼノンか!!何やったがしらねぇがブッ殺してやる!!」


 奴はギアネス兄の方か?

 顔を真っ赤にして唾を飛ばしながら怒り狂っている。


 逃げるか。


 ボロ小屋の陰から出て魔法をぶっ放しながら細い路地を囲まれないようにひた走る。


「まぁぁぁてぇぇこらぁぁ!!!!!」


 待つわけがない、囲まれたら嬲り殺しにされてしまう。


 答える余裕などないので、魔法をもって返答する。


 適当に打ちまくったうちの幾らかは当たったようで、俺を追いかける怒声は随分と減ったようだ。


 しばらく逃げると前方からも怒声が聞こえる。

 どうやら何人か待ち伏せするように配置していたらしい。


 道理で追いかけてくるやつが減りすぎだと思ったんだ。


「へっ、行き止まりだぜぇゼノン〜?」


「…ハァハァ…もう逃がさねぇぜ!」


 後ろからも追いついてきやがった。

 ギアネス兄はでかい図体で全力疾走したせいで随分と息が切れているようだ。


 不意打ちで魔法をお見舞いしてやると避けきれずに肩に穴が空いた。


「っテッメェェェ!!お前ら!!やっちまえ!!」


 ギアネス兄の号令で左右から三人ずつ、粗末なナイフを抜いて迫ってくる。


 魔法発動にはほんの少しだが時間がかかるので、囲まれてしまってはかなわない。


 だが奴らは俺の右手を警戒しているようで、一気には押し寄せて来ない。


 狙われないような位置どりで、ジリジリと寄って来ている。


 …そうか!俺が右手でしか魔法を打たないと思ってるんだな!


 俺は右手に力を溜めつつ、左手にも意識を集中させる。


 俺の動きが止まったのを好機と見たのか、左側の奴らが勢いをつけて切りかかってくる。


「(光線(レイ))」


 左手から放出された光の束は、一人の頭を貫き命を断ち、もう一人の腕も貫いた。


 来ないと思っていた左手からの攻撃に慌てる奴らに、右手でも光線(レイ)をお見舞いする。


「なっ!グゴゥポゥ!」


 左にいた無傷のやつの頭を打ち抜き、そのまま手負いのやつに突っ込んで体当たりして突破しようとする。


 しかし、衝突した時に脇腹をナイフで切りつけられ激痛に悶えてつんのめりながら走り抜ける。


 包囲は破ったが腹の傷が痛み、まともに走れない。

 深く切りつけられたと思ったが、存外浅いようで臓器までは届かなかったのが幸いか。


 入り組んだ裏路地を走りながら適当な無人のボロ小屋を見繕い、転がり込む。


「はぁはぁ…畜生、血が止まらねぇ」


 手を当てると、生温かい血液がべっとりと付着する。


 このままでは血痕を辿られてすぐに見つかり、殺されてしまう。


 応急処置をしてとりあえず止血しようと、そこらへんの襤褸布を拾い傷に当てた時、微かな体温の上昇と同時に頭の中に言葉が浮かぶ。


 光線(レイ)を取得した時と似ている。

 まさかと思い、傷に向かって言葉を紡ぐ。


「(回復(ヒール))」


 するとたちまち血は止まり、痛みも消えた。

 襤褸を手繰って確認すると、そこには少しの損傷も確認できない。


「やったぞ…これはすごいな、傷口が腐らなくなる」


 スラムでは怪我をすると傷口が腐り、それが原因で死ぬ者が多い。

 それが無くなっただけで随分と生きやすくなる。


「あそこか!!今度こそ逃すな!挽肉にしてやる!!」


 見つかったか。

 傷が治り万全になった体で襤褸小屋の裏側を蹴破って飛び出す。


「裏から逃げたぞ!回り込め!!」


 もう三人しかいないのだから、待ち伏せされても怖くはない。

 前に回った一人を屠り、別のボロ小屋の陰から後ろのやつも一人屠る。


「くそっ!くそっ!ゼノン!テメェ俺様にこんなことしやがって、ただで済むと思ってんのか?!」


 ギアネス兄は肩からドクドク血を流しながら喚き散らす。


「お前らこそ、今まで俺に色々やって、ただじゃ済まなかったなぁ?」


「クソガァァァァ!!!!」


 奴は正面から突っ込んでくるが、手負いのせいか脅威を感じるほどの速度ではない。


「死ね」


 右手に力を集め、ギアネス兄の眉間を撃ち抜く。

 奴が倒れて白目を剥いたのを確認して、大きく息を吐く。


「ふぅ…十人相手なんてやるんじゃあなかったなぁ、でもまぁスッキリしたからいいか」


 疲れたので、しばらくは動きたくなかったが、トドメをさせていない奴らもいるかもしれないので逃げて来た道を戻る。


 途中、足や腹から血を流して倒れている奴らにトドメを刺して、アジトを漁りに来た。


「おぉ、こりゃあ大量だな、二ヶ月は食うに困らねぇ量だ」


 日々、飢餓と戦うスラムの住人達にとってこれほどの量はまずお目にかかれない。


 食料を近くにあった大きめの麻袋に全部詰めて、他に何かないか探す。


 奥の方に行くと、ギアネス兄弟の部屋なのか、一区画だけ広めに取られた場所がある。


 その部屋の隅に置かれた木製のガタガタな机の上にある粗末な布袋を持ち上げると、ジャラジャラと金属のこすれあう音がする。


 銀貨数枚とどうか数十枚、鉄貨が沢山はいっていた。


「多いのか少ないのか…」


 スラムの住人である奴らが持っていたのだから大金ということはないと思うが、なにぶん生まれてこのかたまともに貨幣を使ったことがなかった。


 とりあえず元ギアネス兄弟一味のアジトであるこのボロ屋敷をひとまずの拠点とするとかにしよう。


 よし、これからはスラム生活を脱することを目標にするんだ。


 まずはこの襤褸を纏っただけの格好をやめないといけない。


 服、買いに行くか。
















読んでくれてありがとうございますm(_ _)m

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