軍基地へ
次回からは主人公視点です!
男は今、ガルドレイル帝国の中心である帝都ロメイルの中央通りを歩いている。
中央通りは帝都の入り口から帝城までを結ぶ道幅の広い一本道で、道の両脇には民家や商店が立ち並んでいる。
入り口付近は比較的裕福な平民や小規模な商店、奥に行くにつれて住むものの身分は高くなり商家の規模も大きなものが大半になってくる。
かつては活気に溢れていた中央通りだが、今は空き家が目立ち、道行く人々の雰囲気も暗い。
現在、ガルドレイル帝国の隣国であり不倶戴天の敵でもあるシルフィアナ魔道国との大戦中であり、戦費捻出のための重税と度重なる徴兵によって国も民も疲弊している。かれこれ三年も続くこの戦いで、かつて人口2500万を誇ったガルドレイル帝国は民に甚大な被害を出し人口の20パーセントを失い、今は2000万人となっている。
魔道国とは大戦以前にも国境で小競り合いを繰り返していたが、互いに大して消耗もせず、領土の変動もなかった。
しかし、今回の大戦においては魔道国が本腰を入れて大規模な魔道兵団を戦線に投入してきたこともあって、帝国領深くへの侵攻を許してしまっている。
このままでは大きく領土を切り取られてしまうと危機感を覚え、帝国は全軍を持って押し返すべく、次々と兵を投入している。
帝国の常備軍は120万程度だったため、急襲してきた魔道兵団2万と常備軍100万を押し返す力はなく、大規模な徴兵を行なったが戦線は変わらず膠着状態である。
魔道士は強力だ。
魔道士というのは生まれつき魔法の素質がなければならない。
この世には火、水、土、風、光、闇の六大属性が存在し、その上位には破壊、創造の双極属性が存在する。破壊属性を持つものは闇属性の適性を、創造属性を持つものは光属性の適性もそれぞれ兼ね備えている。
それぞれの属性を遍く総ての上位存在たる「神霊」が司る。
そしてその下に、「精霊」が存在し人々に力を貸す。
破壊属性は総てを壊し、創造属性は総てを造ると言われるが、実際にそれぞれの双極属性を持つものが使える力は、あくまで精霊に借りたものであり、そこまで大きなものではないのはではない。
これからの六大属性のうちの、最低一つ以上の適性を持ち尚且つ魔法を行使できる最低限の魔力領を持ち合わせなければならないのだから、魔道士というのは狭き門である。
魔力量、攻撃よりか防御よりか、で多少の変動はあるが、統計上大体一つの適性を持つ魔道士は完全武装の兵士10名、二つの適性を持つ魔道士は30名、三つ以上の適性を持つものなど魔道士の中でもさらに1000人に一人程度で、なおかつ魔力量に大きなばらつきがあるため統計を取ることは難しいが、最低でも完全武装の兵士100人に匹敵する戦力となる。
そんな魔道士を2万人も集め、鍛えて投入してきたことから、魔道国の本気がうかがえるというものだろう。
帝国の民達は日々、魔道国がこれ以上侵攻してきませんようにと祈り、早く戦争が終わって欲しいと願う。
このままでは戦争に負けなくとも、遠からず生活が立ち行かなくなってしまうというものも少なくない。
もう少し余裕のあるものも明日は我が身、気楽でいられるはずがなかった。
だが男の足取りは軽い。
男が向かうのは帝城前の帝国軍第一兵団基地。
男は今までスラムの浮浪者だったため、徴兵もされなかった。
しかし男はもうスラムに住むつもりはなく、帝国の正式な戸籍を取得し民となったので、遅かれ早かれ徴兵されることになるだろう。
そこで徴兵される前に軍に志願することにしたのだ。
軍に志願すれば部隊に組み込まれ戦線に送られることになるだろう。
しかし男は恐怖を感じてはいなかった。
体の奥から溢れる力を感じているからだ。
さぁ、基地まであと少しだ。
読んでくれてありがとうございますm(_ _)m




