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第49話 ダンジョンマスター攻略戦⑧ 原点の戦い 

『―――――――――ッッッッ!!!!!!』


 この世界の神によって作られた、謂わばセーフティとされるその武器と防具を破壊した瞬間、ダンジョンマスターから感じられる、鉛の様に思い殺意が私を貫く。同時にその動きを止め、頭の顔が浮かび上がった。


 流体金属の様な表面はその動きを止め、硬質な銀色の表皮となって張り付き、それが”肉体”であることを定義付ける。


「……正気に戻ったみたいだね」

『……』


 黙するその存在は、肉体的には私と同じ様な形に納まる。腕はそのまま剣の形に、表情は依然変わらず憤怒そのもの。


 そこに、気配が下から。これは土の大精霊かな。ボコっと私の横に顔だけ出す。それに続く様に水、風、火の大精霊達が集まった。



「皆無事?」

『問題は無い……”ライフ”。貴様正気に戻れたのか?』

「ライフ?」


 まるで長年の友人への言い方で名を呼ぶ大精霊……そうか、彼は。


「汚染されていたんだね」

『神代の邪神にな……』

『ボク達や龍神よりも彼の方が格が強かったんだ。それでも、意識だけで自分を抑え込んでいたのに……』

『ああ、限界だったのだな……すまないライフ』

『人間よ。あれは世界樹から生まれる者以外の全ての生命を生み出した原初の命だ。我等の力、スキルではどう足掻いても勝てぬのだ……だがお前ならば』


 全員が悲しそうな顔でライフと呼ばれたダンジョンマスターを見る。その心は果たして伝わったのか、少しばかり殺意は治まり、ライフは口を開いた。


『……レド……グラス?』

『『『―――――ッッ!!!』』』


 彼は、且つての友の名を呼び、その眼にしっかり意志があることを示す。


『俺が分かるのかライフッ!!』

『……ヒュラライア…オチュアニア、フィロヘル……なのか』


 まさかの事態に、他の大精霊達が彼の周りに集まる。私はそれを後ろから見ながら、他の確認をしていた。

 

「どう思う?」

『意識を取り戻したトリガーが聖剣と聖鎧らしき物を斬り落としてからですから……なんとも言えませんね。一時的な物である可能性もあります』

【このまま終わってくれた方が楽なんだねぇ~~、マイ・ボスの剣の形成はそう長い時間はまだ無理だしねっ!】


 そう、ナノマシンだけで構成されている故に、使えば当然磨り減ってしまうのだ。完璧な物は存在しない故に、残り時間は明確に守る必要がある。今の感じだと3分ぐらいだろうね。


 どちらにしろ今は見守ろう、限界時間ギリギリで襲われても、次の手はある。出したくないし、もう”勘付かれている”だろうから見られるのはちょっとね。


『そうだよライフッ!!良かった、意識が戻ったんだねっ!?』

『ライフ、身体は平気なのか?』

『我等に出来ることはあるか?』



『……何故、私は、こんな事になっているのだ】

『『『……?』』』

「サウダージ」

【了解マイ・ボス。密度を高めるとしよう】

『はぁ……厄介な』


 ライフの目には、正気のまま宿した殺意が現れる。全てをその眼の重圧だけで殺してしまいそうなほどの、明確な破壊欲。全員が驚いた顔になるが、ライフの増悪の言葉は止まらない。


『私は創造主様にこの世界の行く末を任された筈だ。私がこの世界の最後の守護者となった筈なのだ。皆を、我が子達を母なる我が大地の上で健やかに、繁栄と幸福の道を歩ませる筈だったのだ……それが、何故、何故コノ様ナ醜イ姿ニ成リ果テタッッッ!!!!』


 それは嫉妬。全生物の始祖だからこそ発する怨嗟の叫び。


『何故私ではなく貴様等なのだっ!!!何故私が汚染されている!!!私が我が子を争わせ、殺し合わせなければならない衝動をどうして止められないッッ!!!!くそがっ、クソガクソガクソガクソガァアァアアアァアァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!』


『くぅっ!?ら、ライフ、待てッ!!昔のお前は――――』

『昔など知ったことかっ!!!貴様等は昔の蝕まれた私から逃げた臆病者達だッ!!!この世界樹の猟犬めッ!!!妖精も精霊も皆屑だッ!!!!』


 どうやら世界樹側と創造主側は似て非なる物らしい。考えてみれば、世界の理が中心核である世界樹ならば、創造主はそこに生命を作り出した本人って事になるのか。


 あれ?そうると創造主って宇宙人の類にならないのかな?


【ワオ、今明かされる衝撃の真実かな?】

『重要な話でしょうが今は黙って見ていなさい』


 しかし妙だ。だとしても仲が良かった風に話していたのに。やっぱり汚染された物に心を支配されている……?


 ………よし。


『……我等精霊の事は、私達だけに言えば良い。だが……妖精はお前が汚染され出来なかった事を、代わりにやり遂げ消えていったのだぞっ!!それを否定することは、侮辱することはしてくれるなっ!!!』

『ダマレェエェエェエエエエーーーーーーッッッ!!!!!!!――――――ッッ!?!?』


 バギャアアァアァアンッッッ!!!!


 振るわれた腕が大精霊達に当たる寸前で、私が割り込み蹴りで吹っ飛ばす。


「ふぅ、正気には戻ってるけど、魂の汚染が激しくて増悪ばっかりが募っちゃってるみたいだね」

『……』

「別に、皆は悪くないよ」

『え?』


「私達は私達に出来ることしか出来ない。協力したって出来ないこともある。それでも前を向いて歩かなきゃならないんだから、その辛さだってあるでしょう?長い間モンスターと蔑まれ絶望に近い生を歩んで来たんだろうけれど、貴方達だって、それを見ていることしか出来ない歯痒い気持ちがあったんでしょう?」

『……お前』

「なんにせよ、あれは”終わらせないと”いけない存在だよ。もう、苦しまない様にね……」

『人間……名は』

「サナリア」

『……サナリア、頼む。あいつを、救ってやって欲しい』

「はいよ」


 さぁ、闘争の呼び水を手に入れた私は強いよ?


『グッゴォォォオオォ……キッサマ、私ノ力ノ及バヌ人間、ダト?』

「ああ、そうだよ。この終わろうとしている世界を救済しに来た。遥か遠い場所からやってきた宇宙人さ」

『フザケタコトォオォォオーーーーーーッッ!!!!』


 力任せ、だが破壊力だけながら十二分に大地を粉砕出来るほどのそれを打ち上げる。この世に破壊と殺戮だけを望む様になってしまった魂は、もう同じ形には出来ない。可哀想だけれど……


 けど、貴方の魂に次の救いがあることを私は知っている。だから――――ッッ



「お休みなさい、ライフ。貴方の名は、私が忘れないから安心してね」

『オォオオオォォオォォォオォオオォォッッッ!!!!!』


 今は亡き古の剣。私がこの原点を忘れることなく繰り返す為の、原初の力。


 それを体現させたこれは、私の本気が振るえるただ1つの武器。


 私達を、星そのものを破壊しようとする為に、ライフはその質量をどんどん大きくする。10倍、100倍、1000倍。元のダンジョン・モンスターの大きさなど遥かに超え、空を覆い尽くすほどの大きさまで膨れ上がる。


 彼の言うところの大地とは、この星そのものを指すのだろう。なれば増悪もやはり星そのものに向くのだろう。


「ごめんね。悔しいよね。妬ましいよね。自分ばっか苦しい想いして、自分ばっか世界中の業を背負わされてさ……だから、もう良いんだよ」



 後は、私が全て請け負うから。


「―――――――――――――ッッッ!!!!!!!!!!!!」


 ザン――――――――ッッッッッ!!!!!!


『―――――――――――――ッッ!!!!!??!?………は、はは』


 光速を遥かに超えた剣の1撃は、星より大きくなったライフの『魂』ごと真っ二つにした。どれだけ強くなろうと、ステータスが上になろうと、それを切られれば生物は命として終わる。


 また徐々に崩れ落ちていくライフを、大精霊達は悲しそうに、だが心底安堵した表情で見ていた……


「サナリアお姉ちゃんッ!!」

「サナリアッ!!」

「おっ?ルル、ケイフル」


 それを見ていたら、後ろから見知った2人。ルルは……まぁ予想通り無事か。驚いている様子も無い。けれどケイフルは私の肩を掴みブンブン振り回してくる。


「ちょっとっ!?アレなによっ!!説明なさいよっ!!」

「するから、するからゆらさないでぇ~~~~うぇっぷっ」


「私達も聞きたいわ」


 すると、ゾロゾロとクレーターを覆い尽くす様に、各種族の人達が出て来る。エルフ、ドワーフ、アマゾネスが揃い組だ。


「本当に倒してのけるとはなぁ……」

「いや、感服だぜ嬢ちゃん……」

「誉めているところ悪いけれど、最後の仕事が残ってるから下がった方が良いよ?」

「え?」


 そう言ってトコトコと中心部、大精霊達の下へと向かう。皆追悼は終わったのか、静かに私を見てくれた。


 私は皆にも今の間に何が起こったのか、そして貴方達がこれからどうしたいのかを話して欲しいと伝え、その場を離れさせる。


(さて、御膳立てはした)

『先程から怪しげな電波が飛び交ってますね……』

(サウダージはもう活動限界で消えちゃったから、戦闘になったらもっと奥の手出さないとだなぁ)

『……まだ、あるのですか?』


 あるよ。超あるよ。楽に次元破壊出来ちゃう装置とか作れちゃうし。それしたら宇宙無くなるけど。ぶっちゃけ転生の後半はほぼ多次元宇宙とかに行く方法とかその理論ばっか考えてたから、ブラックホールとか最初以降絶対事故らずに作り出せる様になったし。


 結局、特異点に圧縮されても私の存在は消えてはくれなかったけれど、ね。魂にまで干渉出来たのに、その魂に結び付いた呪いの正体は……分かんなかったし。


『サナリア……?』

「あ、ああ、うん。大丈夫、さて、来るよ」

「僕も居るからね」

「私もよ」

「……あらら」




 ――――――柱が降り立った。白と黒。二つの細い柱。天高くから降り注ぎ、私の前に。


 そしてその中から現れた者達との遭遇は、2度目だった。


「来たね、天王、そして魔王」

『『また会ったな、人間』』

『という訳だ』

「えぇ……」

「これ、俺達介入しても役に立つのか?」

「大きな借りを作った仲じゃ。何を恐れる」

「お、恐れてなんかねぇよっ!!やったらぁっ!!」

『伝言だが、ドワーフ族を最も酷使するつもりだそうだぞ』

「……おう?」

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