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第45話 ダンジョンマスター攻略戦④ ひとモグラ入魂

「あ~~咽喉疲れたぁ~~」

『お疲れ様です。綺麗な歌声でしたよ。初めて貴方が巫女らしく見えました」

「誉めてないねぇ~~、全然褒めてないねぇ~~」


 ひとしきりの魂達が私の歌と”風”に誘われて”水”の中に集まったので歌うことを止めた。数えきれない程の、今現在この世界に現存する全ての生物より多いアマゾネス達の魂が揺蕩っている訳だけど、これを『成仏』させる為には、儀式の成功に必要不可欠な”土”が必要となる。


 そもそも、純粋な魔力によって作られた”場”が必要だったから大精霊の力を借りた訳で。そこに物質性のある物で代用すると質が落ちるのだ。これは私の長年の研究にも基づく話になるけれど。


『これでダンジョンマスターを守る魔力は完全に消えたか』

『あーもう、あの数を集めるの苦労したよぉ』

『我等の力をこの様に役立てるとはな……』

「はいはーい、大精霊の皆さんはまだ動かないでね。私今から土の大精霊引っこ抜きに行くからさ。ちょっとあれ抑えておいてくれない?」


 アレ、というのは勿論魔族ターツェルのことである。


「結構体力は削っておいたけど、あの程度のダメージじゃ直ぐ復活すると思うから」

『さ、散々ボコボコにしていた気がするんだけど?』

「あんな表面上の物理的な戦いじゃ意味が無いからね。戦いそのものは完勝出来たけど、それだけじゃあっちの”理”には勝てない」

『コトワリ?』

「簡単に言えばアレ等の”本体”かな。んー説明する時間が無いからなぁ。一言で言えば敵はこちらの世界の概念じゃないんだよ。違う宇宙の、もしかすると全く違う高次元から来た存在なんだ」


 一番最初、天王と魔王が思念体を送って来たのと同じ。通常では碌な認識すら出来ず、正体不明の力に屈する他無い程の力。それは関係無く、あれがどういう”原理”で、どういう”法則”で存在していたのか。それが肝なのだ。


 それはターツェルもやっていたこと。物理的な”本体”を有していない様な戦い方。私にボロボロにされても立ち向かって来る時点で、そういった事が無意味である事の証明。


「私達は知らなきゃならない。でなければ、本当に何も出来ず、敵の手の平の上でゆっくりと滅亡するしか無くなるんだよ。その事態を防ぐ為に、どうしてもこの世界の皆の力が居るんだ。だから……」




「その役割、私がお引き受けいたしますっ!!」


『『『ッッ!!?』』』



 いつからそこに居たのか。大精霊達は気付いていなかったが、私はその瞬間にはその人物の手を握っていた。そこに来るのを分かっていたから手を差し出しただけなんだけどね。


「初めまして、私の名はサナリア。レーベルラッドの巫女だよ」

「わっわっ、有名人さんですかっ!?え、えと。私はヤエと申しますっ!!西のッッ――――」

「名前だけ分かれば今は良いよ、戦線の人。この場に来れて、貴方にしか出来ない戦い方で、あれをどうにか出来る?」


 指刺した、ダンジョンマスターの上で回復し終わり、こちらを見据えているターツェルを見て、ヤエは微笑む。


「東の人型魔族ですか。見るのは初めてですが、対処方は天使の人型と同じ筈ですから任せて下さいっ!!」

「よっし、頼もしい返事だね。それじゃあ、行って来るっ!!」






「……やはり、肉の身体というのは難儀なものだな。人間どもに合わせているといえ、この臭いが誠に醜悪」

「ならばとっとと消滅してくれると嬉しいんですよ?」


 ゴキゴキと首を鳴らしながら立ち上がったターツェルの背中に剣をチクチク刺すヤエ。余裕こそ無いが、おちゃらけた言動でターツェルを煽っている。音も気配も無くいきなり現れたその存在に別段驚く仕草も取らず話し掛ける。


「西の者か。天使臭さが強い、相当殺しているな」

「貴方達にも”死”に対する理解があったんですね。彼等はそこら辺薄くて倒している気がしないんですよ」

「我等ほど個人で生きておらぬのだから当たり前よ。そこら辺は相容れぬさ……まぁ、それでも人間ほどではないがな。お前達は……鼻が曲がるっ!!!」



 怒りの気が手に乗って放たれるが、後ろに下がりながら振った剣で切り裂かれ、ダンジョンマスターの右頬に大きな傷が出来た。手からは未だおどろおどろしい色の何かが手に纏い、周囲の重圧を何倍に引き上げる。


 それをいつもの様に”ただの鉄剣”で振り払ったヤエは、何事かを呟き右目を抑え、離す。


「こちらとしても同じことが言いたいですね。もうかれこれ貴方達の処理は億を越えてしまっていますから。私の鼻からも……血の匂いがしっぱなしですっ!!!」


 開いた眼には、3種の炎が宿っていた。







「ほっほぉ、これが核か。あーあー、見事に混ざってて混濁状態だねぇ」


 やってきた助っ人にターツェルの相手を任せて、私は私が最も戦うべき相手と対峙する為に、最後の楔である”土”の大精霊の解放をしにダンジョンマスターの核の上に立っていた。


 真っ赤なマグマが捻じれながら流体している様な表面から見える景色。中に圧縮された太陽でも入っているんじゃないかと思うぐらいの熱量が襲ってくるけれど、今更その程度で火傷も出来ない状態なので問題無く触れる。


『大精霊は……ええ、居ますね。大きな……これは、モグラでしょうか?』

「えっ……わ、なにあれ可愛い」


 巨大な核の中、遠くに見える唯一の物体。それは分かり難いが、確かにモグラだった。待って、なんであんなにもきゅもきゅした身体してるの?よくあの流体の中耐えられるね。結界が消えたから見える様になったんだろうけど、あの位置は”水”の大精霊でも行けないだろう。


 とにかく標的を発見したので、私は核を破壊しない様に『領域変化』の『干渉』と『侵入』を使って、魔力で身体をコーティングしながらぐにょっと入っていく。


(中々密度濃いけど、この程度ならまた問題無いね……)

『この流体……魔力かと思っていましたが、違いますね』


 そりゃあ違うだろうさ。これは言ってしまえばこの生物にとっての血流みたいなものなんだから。


『……生物?』

(あれ?分からない?これ、マグマの様に熱いんじゃなくて、ただの体温だよ?大精霊の力を使っているのは核の本来ある姿じゃない。ダンジョンマスターっていうのは、元々手足のある様な存在じゃないんだから)


 だから人の姿を象っても、足も手も動きはしない。むしろ邪魔ですらある。大精霊力で大地に眠っていた、過去に戦い死んだアマゾネス達の魂を取り込み核を守っていたのはそもそも自身を守る為だ。切っ掛けである『呪い』は、それの手助けをしたに過ぎないのだから。


『つまりなんですか、ダンジョンマスターとは単なるいち生物の一種に過ぎないと?』

(正確に言えば誰にも見つかる筈も無い、この世界の根幹を成す存在と同一と見て良いかもね。世界のあらゆる場所にダンジョンを生成し、その場所の環境を記録、保護する。世界そのものと繋がっているからこそ出来る所業は、神に等しい)


 古代の本を読んで知った知識の中に、妖精の『生態』についての一文がある。


 妖精はどんな種でも、必ず『世界樹』からその命を発露させると。


(ダンジョンマスターは『世界樹』にそっくりだよ。自身を使って数多のダンジョンを生み出し世界に干渉する。それがどんな目的かにせよ、やっていることはそこまで変わらないよ)


 だからこそ、些細でも歪めばそれだけで天災を招いたのだ。あれは最早自然災害と同等だろうし。それに、そういった物に干渉するには、人智を超えた力が必要になる。


 と、話している間に着いたね。見上げる程のもふもふが目の前に。手触りも素晴らしい。


(んー、大きい)

『……だ、れだ……?』


 声しっぶ。おっと、任せたディアナ。


『落ち着いて聞きなさい大精霊よ。私の名はディアナ。貴方に触れているのは私の相棒のサナリアと申します。訳あって貴方以外の大精霊の力を借りて、この場まで来る事が出来ました。そして貴方を救出した際、その力を貸して頂きます。良いですね?』

『う、ぐ……わか、た……』

『ではサナリア』

(あいあい~~よいしょっと)


 置物でもあるが如く持ち上げ、投擲体勢よーい。大丈夫大丈夫、身体はコーティングしておいたから痛くない痛くない。


(せーんのっっ!!!)


『ぬっ!?おぉぉぉおおおぉおぉーーーーーーーっっっ!?!?!』


 ずぼぼぼぼぼぼぼぼおぉおぉぉぉぉぉどっっっぼぉぉぉぉおおおぉぉーーーーーーーんっっっ!!!!!!!



 粘液状の流体をぶち破り、猛烈な速度でスピン回転しながら外へ飛び出したモグラ大精霊を追い、私も核の外に出る。途端に、起きる、空気の振動。


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォオオォオーーーーーーッッッッ!!!!


 核の周囲に引っ付いていた土、草、鉱石の巨大な塊に、一斉に罅が入り崩壊し始める。形など到底保てる訳もなく、頭から爪先まで、バラバラとなって地上に降り注ぐ。それは地鳴りとなって世界へ響いている様だった。


「見えてるかなぁ、ラダリアの皆」

『口あんぐりしてそうですね。と言っても、まだ本体を残していますが』

「そりゃそっか。むしろ楔が外れたんだから……――――ッッ!!!!」



 グニャリと空間その物が捻じ曲がる様な威圧感が、周囲を覆い尽くす。私の目の前で、数十キロ単位の大きさだった核が、「キュンッ」と一瞬で圧縮したのだ。そこから核を中心にして新たな”何か”が形成され始め、それが放つ威圧感が、ターツェル達の戦いを、大精霊の動きを、魂達の鼓動を止める。


 形を成していくそれは、やがて1つの人間の様な形となった。だが身体は銀色であり、非常に滑らかでシルエットしか似ていない。顔は無く、代わりに模様の様な物が浮き上がり、流動していた。


「おぉ……おぉ……っっ」


 私は口にせざるを得なくなった。この戦い……



「勝負はこっからってことかな?」


「オ”オ”オ”オ”オ”ォ”オ”ォ”オ”オ”オ”ォ”ォ”ォ”ォ”オ”オ”オ”オ”オ”ーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



 解き放たれた本当の”天災”が、狂気の感情を持って相対する。

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