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第42話 ダンジョンマスター攻略戦① 亡者の行進

 元々ダンジョンマスターとは”神”に作られし神聖な生物だった。その役割とは、世界各地にダンジョンを作り、神の作りし生物達が決して争わない様に生態系の維持を目的としていたのだ。それは汚染された”魔物”になっても変わらず。人が入らない限りは徐々に勢力を広げ、魔物の生態系を守るだけの存在だった。


 彼の者には意識と呼べる物は存在しなかった。それはシステムという名の本能だけで構成された存在故に、自己を持つ必要が無かったのだ。だからこそ、何の抵抗も無く外次元の存在に利用されてしまった。


 そして今や、自らが生きるこの世界を、己が身で破壊し尽くそうとしている。例え自身が人類の敵であろうとも、魔物の生きるこの世界まで憎みはしない。だからこそ、今こそ誓おう。


(我、世界に秩序を齎す者也て……その使命、全うせん)



 遍く地獄の窯は、この誓いより世界へ解き放たれる。それを止める術を持つ者は、現段階でたった1人だけだった……







 さて問題。この世で最もおどろおどろしいナマモノってな~~んだ。はい、世界はゾンビです。


「あーもう、電気信号とかそういう類ならヘッドショットで一撃なんだけどなぁ」

「そんな設定はゲームの中だけだよお姉ちゃん。ほら、もう来るよ?」

「へいへーい。留守番はケイフルに任せてあるし、そろそろ行こっか?」

『遂に御対面ですね』


 現在位置は巨人の真下。空が遠くまで見えない股の間で、私とルルとディアナは、悍ましい程のうめき声の数と、それに合わせた足音を耳にしていた。SFならではの”死体が動く”って訳ではなく、こちらでは立派に”魔物”として扱われている存在。ゾンビの大群が、ダンジョンマスターの足から『波』となって溢れ出したのだ。


 本当に”波”と言って差し支えない程の量のゾンビ達。しかも1匹1匹が元歴戦の勇士。アマゾネスの魂が宿っているのだからさぁ大変。


 これを想定してドワーフも、エルフも、アマゾネスも防備を固めさせて待っていた訳だね。一応全ての非戦闘員はドワーフの砦に避難させ、その守護にケイフルを添えている。


「後は皆が時間を稼いでくれている間に、私達は本元をどうにかすればOKだね」

「結局何やるか教えてくれないんだもんなぁ……」

『その方が捗る、とのことですが?』

「そういうこと。なんてったって、今回の絵空事は、結構私らしくないし」


 アマゾネスの族長アブルから既にその【固有スキル】は得た。後はそれを私がどう活かし、そしてどう扱えるかで来まる。もっと言えば、エルフとドワーフからの情報もあるから、それを使ってダンジョンマスターに使われている”鉱石”と、その中核となっている”聖剣”と”聖鎧”をどうにかしなきゃならない。


 そして最後にダンジョンマスターの最深部である”ダンジョンコア”を破壊、もしくはあの巨体から奪取、もしくは魔族と名乗っていたあの……ターなんとかから制御を奪い取れれば私達の勝利となる。


「……」

「ルル、不安?」

「……少し」

「よしよし、素直は良いことだよ」


 まぁ、いきなり自分の姉より強大な者を倒すってなったら、そりゃあね。


「けど、支えてくれるんでしょ?」

「勿論。ディアナと一緒に、ね?」

『……否定はしません』

「よーし。じゃあ行ってみようかっ!!」


 もう目前まで迫っていた濁流の様な臭気を纏った者達を吹き飛ばし、1匹の黒龍に飛び乗って、私達は上へと上がった。


「全速力で、巨人の頭部へっ!!」

『いっくよぉぉおおっっ!!!!』


 凄まじい爆風が木々を薙ぎ倒しながらゾンビを八つ裂きにし、バハムートとなったルルが飛翔する。直ぐに速度は音速へと達し、空気を切り裂きながら目的地へと全速前進ってね。


 だが、当然それは簡単な道のりではない。


 ズドドドドドドドド―――――――ッッッッ!!!!!!


『――――――――――ッッ!!?』


 巨大な巨人の1部分から、沿って飛ぶルル達に向かって幾本もの鉱石弾が飛来してきた。


「ルルッ!当たったらダメだからねっ!!あれタダの石ッコロじゃないよっ!」

『分かってるよっ!!くぅっ!!』


 足だけで数十キロある巨体。全長がどこまであるかも分からないダンジョンマスターの防衛装置って言ったところか。これもフォルナから”事前リサーチ”をしてあるからルルもひょいひょいと躱していく。


 だが何処までも、どの位置からでも飛んで来る鉱石弾。1発でも数トン単位の重量ととんでもなく固く、そして高密度の魔力を纏ったそれが雨霰と来るのだ。大きさからも考えて身体の大きさを1人乗せられる程度に抑えている為、掠ってもアウト。まぁ大きくしていても的になってハチの巣だけど。


 幾らバハムートのステータスで強化されていると言っても、相手のステータスは遥か上にあることは明らかだ。でなければ、鉱石弾が地平線の彼方まで速度を維持したまますっ飛んでいくなど物理の限界を突破し過ぎだよ。


『質量が膨大ですからね。上に着くまで攻撃は続くと思いますが』

『この調子なら数分で着けるっ!!』


 それでもルルの速度はそれを凌駕する。そして私の身体も十二分にそれに耐えうる。胴体を回りながら更に加速し、上空の分厚い雲を抜け、空へ。


『見えたっ!!』

「あれが言ってた”大精霊”ってやつね」

『更に上の様ですね。なるほど、大気圏よりも更に上でしたか』


 遮る物の無くなった透き通った空。そして、その向こうへ無限に広がる宇宙。そこからは『人外』達の戦争が巻き起こっている真っ最中だった。











「「「―――――――――――――――ッッッ!!!!!」」」


 冥府からの叫びとは、きっとこういう感じなのだろう。誰もが震えあがる様な歪な声が、空間を振動させながら彼等の耳に叩きつけられ、脳を揺さぶられる。魂が揺れ動き、”死”の絶望を強制的に感じさせられてしまう。死ねばお前達もこうなる運命だと突き付けられる。


 その衝動を、戦士達は気合で掻き消し、亡者の群れに対して防衛線を築いていた。



「弾幕を切らすなっ!!矢の補給は随時続けろっ!!」

「精霊に託す魔力を惜しむなっ!!ギリギリまで注ぎ込めっ!!!」

「テメェ等っ!!此処が正念場だぞっ、数万年振りの共同戦線を楽しめっ!!!」


「「「うおぉおぉおぉおおおーーーーーーーーーっっっ!!!!!!」」」


 命ある物達が雄叫びを上げ、自らを鼓舞しながら地面を舐め尽くす様に迫るゾンビの群れを薙ぎ倒していく。アマゾネス達は砦の前で巨大な盾で壁を作り、数千の体当たりを防ぎ槍で串刺しにして徐々に山を形成。登って来るゾンビの頭を切り飛ばし、その頭を踏み潰して確実に倒す。


 エルフはその後ろで只管矢を放ち、後続のゾンビ達を正確に射抜く。精霊達は更にその後方、密度の濃い場所に爆撃の様な魔法を何度も放ち消し飛ばす。3種族の中では最も広範囲に攻撃を咥えられる為、防衛の要として彼等も力を惜しまない。


 そして、その2種族を支えるのがドワーフ。彼等が間に入り壊れた武器、防具の超高速整備と矢の補充。相手のゾンビはただのゾンビでは無い。歴戦の勇士のステータスがそのまま宿っているのだから。剣は使えずとも振り上げる手が当たっただけで鎧が凹むのだ。だからこそドワーフは持前のスキルで即座に修復し、改善し、強化して彼等により強い物を提供する。その傍ら山の様に矢を作り供給する。普段物を作るか鉱石を掘るかの人生、多種族との共闘でこれほど役に立つ種族は他に居ない。



 三位一体の完璧な防衛陣を敷いて戦いに望み、山に築いてある砦を360度守り切っていた。それでも、ゾンビの波はその勢いを決して衰えさせず突っ込んで来る。だが恐怖など感じる暇など無く、生存を賭けた”時間稼ぎ”が繰り広げられる。



 その様子を少し離れた場所。ドワーフ国内の安全地帯に集まった3種族の非戦闘員達の前で仁王立ちしているケイフルとバンデスが見ていた。



「で?私は動かなくて良い訳?」

「ああ、今エルフとアマゾネスの奴等が前線で戦って俺達がサポートしてっからな。あんたドラゴンなんだろ?馬鹿威力で巻き込まれたら嫌だしな」

「ふーん。まぁ良いけどね」

「王よっ!!数がっ……数の差が果てしなくて捌き切れませんっ!!」

「おう、もうちょっと耐えてくれお前等っ!!時間通りなら1時間以内に終わる筈だっ!!終わったら秘蔵の酒全部くれてやると伝えておけっ!!!」

「よっしゃぁあっ!!」

「……命軽くない?」

「酒が命だからな」


 砦の中で完全武装状態のケイフルが異常な威圧感を発しながら不機嫌にバンデスの言う事を聞いていた。


 彼女の役目は不足の事態に対する備え。相手は現在ゾンビだけを出して来ているが、他の魔物が現れれば、そちらにも意識を向けなければならない。更に”魔族”という存在が居る以上、違う戦力を警戒しておく必要がある。


 その相手にサナリアはケイフルを当てたと考えれば、3種族の長全員が任せる他無かった。


「まぁ、私は私で警戒しておくから、あんた達は精々頑張りなさいな」

「へいへい、んじゃ、俺も行くから頼んだぞ」


 そう言ってバンデスもまたドワーフの武器、整備道具を持って戦線へと向かって行った。残ったのはケイフルと沢山の”子供達”だけ。皆が一様に怯えて泣きそうな顔をしているのだが、その中で小さなエルフの女の子達が必死に励ましていた。


「大丈夫よっ!!私達は精霊に愛された種族なのよ?どんなに強大な相手でも、自然には勝てないわっ!!!」

「そ、そうよ。大丈夫。精霊様の加護が私達のお父さんお母さんに着いている限り負けたりしないもんっ!!」

「……だい、大丈夫だよね、お姉ちゃん?」

「…………ん?」


 いつの間にか、視線が全てケイフルに向けられていたことに本人が漸く気付く。鎧を力無く摘ままれ、沢山の上目遣いで見られていた。


(……)


 何を言えば良いのか非常に悩む。現実を言えば、砦が持つタイムリミットは30分にも満たない。本来なら数十万程度の相手しか想定されていない砦に、それこぞ数十億以上のゾンビが大挙しているのだから。普通の人種ならどれだけ防備を重ねても波に呑み込まれるだろう。彼等の場合は獣人の様な常日頃の波に対応している訳ではない。


 ステータスに圧倒的な差が無い以上、数で来られれば踏み潰されるのが必定だった。故にケイフルは現実の言葉しか言わない。



「楽勝に決まってるじゃない、此処には私が居るんだから。ドラゴン舐めんじゃないわよ」



 示すは矜持のみ。ドラゴン娘はどこまでも自然体に生きるだけだった。

「ほら、分かったらもっと中入ってなさい。巻き添え喰らったら消し飛ぶわよ」

「「「は、はいっ!!!」」」

(……何か素直ね)

(((かっこいぃ……)))

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