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第38話 エルフの国リザナイヤ

「見た目は普通の森だけど、本当に此処?」

「そうだ。後は説明した通りに行けば分かる」

「ほぉん……分かったよ。ありがとうシゼルさん。アブル族長に宜しくね?」

「うむ」


 アマゾネス達の集落から約40キロほど歩いた先、先程よりも大樹が多い森の手前まで、私達はシゼルさんの案内で何事も無く辿り着いた。そして案内は此処までであり、ここから先は全てがエルフ達の住処となっているらしい。


 彼女は強面そのままに別れを済ませると、豹の様にしなやかな走りでまた森の中に去って行った。それを見送ってから、改めて目の前の大樹の群。大森林に目を向ける。


「木1本でもケイフルより大きいね。一体どれほどの樹齢なんだろう……?」

「私は凝縮してるのよっ!!やる気になればもっと大きくなれるわっ!!」

「此処で成ったら本体の宝石割るからね?」

「お姉ちゃん、ケイフル、行くよ~~?」

「は~い」

「ふんすっ!!」


 という感じで、ルル主導で私達は大樹の間を抜けて行く。何か凄いマイナスイオン的な何かを感じるぐらい神聖な場所だと感じられるねぇ。物音1つしないのが怖いや。ルルは教えられた通りに大樹に示された手順で道を選び、ケイフルは偶に跳んで来る魔物を仕留め、私がそれを締まっていく。


 時には大群で押し寄せる虫系の魔物は、なるべく自然を破壊しない様に私が一片に斬り捨てて回収した。


「何か魔物との遭遇率が多いね」


 統制されている訳じゃないけれど、敢えてこういう道筋で用意されている様にも思える。


『3人とも、ちょっとそこで止まりなさい』

「「「ん?」」」

『風と、水……土が盛り上がる音。魔力濃度の高い攻撃が向かって来ています。というかもう来ましたね』


 ブオッッ!!!


 ブシャアッ!!!


 ボコォォッッ!!!


 それぞれが明確な殺意を持って向かって来た全て攻撃。大樹の間を縫う様にして風が豪風となって奔り、水が生物の様に土を抉りながら蛇の如く訪れ、土が周囲を遮断する様に溝を作った。


「おおっ?」

「えっ!?えっ!??」

「はんっ」


 私はまぁ、領域内に入っていた筈なのに直前まで攻撃に気付かなかった事に疑問符を浮かべ、ルルは驚き、ケイフルは自然に私とルルの前に立った。んー惚れちゃう。


 水で出来た蛇は周囲に出来た溝に入り螺旋を描き土を巻き込みながら壁となり、上から風の刃が雨となって降り注ぐ。見事な連携魔法だと思うけれど、攻撃を任せるのが風だったのが仇となった。


「せいっ!!」


 バチィイィィインッッッ!!!!


 拳だけを龍鱗化させてぶん殴り、衝撃で周囲の壁ごと吹っ飛ばした。壁が無くなり周囲を見渡せば……既に私達は囲まれていた。


 白い肌。蒼い瞳に黄金の髪。耳は長く、全員が独特なローブと軽装に身を包んでおり、タルワールの様な剣と腕に装着する型の盾を持っていた。弓を背中に背負っているが、フレンドリーファイアしないって心構えはしっかりしている辺りちゃんとした戦士だね。


 なんにしろ、私達は盛大な歓迎を受けたらしい。


「ケイフル、殴っちゃダメだからね。ルル、頼める?」

「分かってるわよ」

「う、うん。えっと、お初にお目に掛かりm「可愛い」……えっ」


 ルルの言葉を遮って、隊長格っぽい人がルルの前の前で腰を降ろし、目線を同じ位置にして言う。つい先ほどまでのキリっとした顔とは思えないほどトロトロな表情で。



「なんて可愛い”けもショタ”なのかしら……❤」

「ふぇっ!?」

「捕まえたっ……へ、へへ、私と良いことしないボク~~❤❤さっきは攻撃してごめんねぇ~~怖かったよねぇ~~~❤❤❤」

「「うーわっ」」


 エルフはそのままルルを抱き締め、頬摺りしながら蕩けた顔で涎を流す。他のエルフ達も寄り始め、ルルはあっという間に美女達の中に埋まった。ガッチャガッチャして痛そうだねぇ……


「お姉ちゃん助けてーーーーッッ!!!!」

「はっ!!ごめんごめん。おーいエルフさん達、お話聞いて~~~」

「「「嫌っ!!」」」

「ま、満場一致だと……ごめん、耐えてルル」

「そんなぁ~~~~~……」



 訳が分からずそのまま約1時間。えっ?1時間?うん、1時間だ。彼女達はずっとルルのあらゆる所に顔を埋めて匂いをこれでもかって嗅いで満面の笑みで離れていくという珍景を私とケイフルは見せられていた。


 そして最後の1人、隊長っぽい人が尻尾から顔を離し、またキリっとした顔に戻って立ち上がる。ルル?私の後ろに隠れて「グルルルゥ~~……」と半泣きで超威嚇してるけど。後尻尾でメッチャ足叩かれてる。ごめん、ごめんて。


「エルフ嫌いッ!!嫌いだもんッ!!!」

「あ~起こったルル君もかわえぇよぉ~~❤❤」

「ひぃ~~……さ、サナリアお姉ちゃん帰ろう?あの種族は消してこう?」


 普段なら絶対に言わないであろう物騒な提言を出してきたルル。叶えてあげても良いんだけど、こんな変態達でも必要な時があるからね、申し訳ないけど我慢して……


「えっと、エルフさん?とりあえず話をしたいから貴方達の国まで案内してくれないかな?」

「……良かろう人間。アマゾネス達から魔道具にて話は伺っている」

『なら何で攻撃したんでしょうか?』

「むっ……例の声か。無論本人と確かめる為だ。極稀に普通の人間も迷い込むのでな」


 ああ、そういうやつか。集落とか里とか部族って、やっぱりどの世界、どの時代でも行動によって証を示すからやり易いんだけど、今回みたいな例は初めてだったなぁ。まさかエルフ達全員が同じ”性癖”持ちだとは……



「ねぇサナリア。さっきあいつ等が口にしてた”ショタ”ってなんのこと?」

「知ったら戻れない沼っていうのもあるんだよケイフル」







 エルフの里に入った瞬間、空気が変わったのが直に認識出来た。続いて景色が開けていき、いつもの青空が広がる。そこにも木が生え渡っていたが、その全てが途中で家の形となっていた。なるほど、天然のログハウスってやつか。


 私達はエルフ全員に珍獣でも見ているかの様な目線を受けるが、ルルだけは先程のエルフ達同様の顔をされ、ルルがしきりに唸っていた。いざという時は実力行使もするべきかちょっと迷うね。


 そうして、途中ある物に乗ると言われ魔道具を渡される。


「これは?」

「レブナントボードだ。魔力を注ぐことで……ああやって動く」


 指差された方を見ると、中空でアクロバットな動きをして遊んでいる子供達が居た。へぇ……魔道具の源であるレブナント鉱石を各部に配置して出力調整しているんだね。術式を考えた人は相当複雑だったろうに……


『見ただけでその術式パイプを全て把握したでしょう今?』

「昔の血が踊っただけさ」


 とりあえず私はルルを前に乗せての2人乗り。ケイフルは1人で乗った。


「基本は魔力を微量流せば地面から浮き上がる。前に傾ければ前進するので私に合わせろ……ルルきゅんこっち来ない?楽しく遊べるよ?」

「やっ!!」

「嫌がる顔も可愛いなぁ……」

「いい加減にしときな?ね?」


 エルフの国はアマゾネスの集落と違ってかなり広い。人数も結構な数だけれど、それ以上にそこら辺を無造作に歩いている『精霊』達に驚いていた。私でも本の中でしか知らなかった存在。神話の中でしか登場しなかった聖なる者達が、こんなにも身近に生活しているとは。


 エルフは人類種の中でも取り分けその心が清純だとされている。勿論他者に対する攻撃性はあるが、基本的に憎しみや嫉妬心などは抱かない。誰に対しても威風堂々といった様子なのだ。だから行動性に躊躇が無いし、言動は一貫している。


 ただし、エルフ達にはとある制約が存在し、この場所から動けない。そしてアブル族長の言う通りならば、現状で今すぐエルフ達と共闘契約を結ぶのは不可能に等しい。


(相手は精霊か……はぁ、戦ってばっかりは嫌だなぁ本当に)

『今やっと40万回目まで読み進めましたが、戦ってばかりの人生でも無かったのですね』

(まぁね。後半からはほとんど研究者だったし。ただ戦えるってだけで)


 新技術、最先端医療、革新的理論、法則、あらゆる分野に対して眼を向けていたあの頃。何が何でも寿命を稼いで知識を増やし、人類が歩んでいる道筋に新たな光を抉じ開け進ませる必要があった。じゃないと、次転生した時にまた知らない理論や技術が発達していないかもしれなかったし、それが手に入らないと私の呪いもどうにも出来ないって考えていたから。


 結局それは身を結ばなかったけれど、人類が宇宙から消滅するっていう事態は避けられたから良かったとは思っているよ。争いは無くならず、宇宙が1回崩壊仕掛けたけど。


「見えたわよ」

「ん?……おぉ~~でっかいっ!!」


 樹木の家々の間を走っていると、目の前に更なる巨大な大樹が立ちはだかった。数百mはあろうかという高さであり、その下には蔦が絡まり宮殿の様な様相となっていた。超ファンタジーだ。どういう構造しているか数年掛けて調べたくなる。


「あそこに偉い人が居るのかな?」

「ああ、女王様だ。くれぐれも無礼は働かない様に」

「ルルに飛び掛かる心配が無ければ大丈夫だよ」

「……」

「そこは確約してくれないんだ……」


 宮殿前には沢山のエルフ達が武装して並んでおり、その後ろには数多の精霊達がゴロゴロしていた。レッドカーペットとはまたシンプルに高級感あるね。精霊達の気ままさとエルフ達の真剣さのギャップで腹筋が崩壊しそうだけど。


 そしてやはり、此処でも目線は全てルルに集中していた。


「これはいよいよ病気の域では……?」

「治るのかしら?」

「無理でしょ」

「僕、今すぐこの国から出て行きたい……」



 仰々しい通路、ドアを潜り抜けて着いた先は、謁見の間と言うに相応しい場所だった。目の前には王座に座る1人の若々しい女性。他のエルフ達と違って、私と同じ様に髪が白く透き通っているのが分かる。彼女はニコニコと人懐っこい笑顔で立ち上がると、


『種族はハイエルフ、というものらしいですね。年齢が1万歳を越えています』

(わーお、長生き)


「外界からの旅人達よ。ようこそ我が国リザナイヤへ。私の名はイレオール。エルフを纏めしハイエルフの女王です」

「お初にお目に掛かります女王様。謁見の機会を頂き誠に光栄の至り。我が身は獣人の国ラダリアの王子、ルル・フォックス・ミーニャント・ラダリアと申します」

「どうも、人間のサナリアです」

『頭の中のディアナです』

「古龍、ウインドドラゴンのケイフルよ」


 ルルだけ膝を突いて挨拶をし、私はスカートを摘まんで頭を下げ、ケイフルはビシっと手を挙げるだけという致命的に息の合っていないチームワークを見せてしまい笑われる。ディアナ?頭の中で本読みながらだけど。


「くふふ、面白い方々ですね。ふむ……お話の概要についてはアマゾネスの族長、アブルから聞いています。大変面白い。”天王”と”魔王”、両者に対して個人的に宣戦布告した世界唯一の人間サナリア。貴方の存在は紛れも無くこの世界の中で”勇者”と呼ばれるそれです」

「……?いきなり何の話を」

「関係は有りますよ。貴方とエルフの共闘。そしてアマゾネスとドワーフとの連携。それを成す為には、どうしても”勇者”という存在が必要不可欠なのです。それこそがエルフの契約する根幹であり、精霊、延いては”大精霊”との共闘に繋がるのですから……」



『勇者』……それは世界が窮地に陥った時、必ず異世界より呼ばれる者達の総称だった。少なくとも人間の間では。だけど、イレオールの言う勇者はそれを指さない。何故なら。本物の勇者ならば必ず持ってなければならない”神器”を持っていないから。


「我等はこの世界そのものを司る『世界樹』を守る一族。そして、その世界樹の守護精たる『大精霊』との盟約を持つのです。彼等はこの世に1つしかない『聖剣』と『聖鎧』を持つ勇者に”試練”を与え、これを超えた者と契約を果たす。そうなれば我等は喜んでその者の力になれる権利を持つのです」


 ピロリん♪ クエスト『聖剣』『聖鎧』『大精霊の試練』が追加されました。という音が聞こえてきそうだ。


「えっと……その聖剣と聖鎧って何処にあるの?」

「既に貴方達も眼にしていますよ。あれは大きいですから」

「……マジ?」

「それにしても……そちらの2人は胸が大きいのですね」もにゅもにゅ

「言いながら揉むのは止めない?」

「こっち触ったら切り落とすわよ」

(エルフって変態しか居ないのかな……?)

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