第36話 魂の行先
『……改めて見ると、物理現象を完全に無視した見た目ですね』
ディアナの言葉に、3人とも上を見上げながら頷いた。
山とかそんなレベルではなく。成層圏まで貫く程の巨体。山から生えた様に見える巨岩の足は、その広さだけで山4つ分はある。身体は上半身から半分しか見えず、身体は黒い何かの鉱石で染まっている。それも所々藻に覆われていたり、水が流れ出していたり。
「まるで、自然がそのまま形を成したみたいな感じだね。自重で潰れないけど、下手に動くのは無理って思えるから、おそらく要塞みたいなものなんだろうけど。因みにディアナ、あれのステータスは見えそう?」
『ここからだとまだ無理ですね』
「それより、直下付近に降りたは良いけど、まずはどうするのよ?」
「えっと、3種族に会いに行くんだっけ?」
2人の言葉に、3本指を立てて応えた。
「そうそう。アマゾネスと、エルフ、そしてドワーフにね」
巨人の手前にもまた、人の形からしてみれば広大な森と山々が広がっている。私達は今からそこに住んでいる筈の先住民族達に接触するつもりで居た。
ただ、手掛かりは何も存在しない。フォルナ達も最初あ力を借りようと探したらしいのだが、侵略が始まって以来完全な音信不通。というころで、私達の出番である。目下、ダンジョンマスターへ勝負を挑む前に、彼等を探す事から始めなければならない訳だけれど……
「んーけど、空からじゃ何も見えなかったね」
「所謂『結界』ってやつでしょうけど……」
「やっぱり歩いて彼等のテリトリーにどうにか入るしかないんじゃないかな?」
「それしか無いかぁ~~。じゃ、ちょっくらピクニックといこうか」
『久し振りにのんびりですね』
という感じで、森の中を歩き出した。期限は1ヶ月以内。私は『領域変化』で周囲を索敵しながらだから、多分数日も歩けばどっかには引っ掛かるだろう。
ああ、ルルの『幻獣化』についてだけど、あれ以来『妖精』を出せなくなっていた。アレの力を借りれば一瞬で大抵の事はどうにかなりそうだけれど、ルル曰く「かなりの制約を無視して勝手に出現した」とのことなので、気長にまた勝手に来てくれるのを祈るしか無い。それまでは私が何とかするさ。
そういえばステータスがまた更新されていた。どうやらフォルナの剣を切り落としたのが切っ掛けらしいんだけど……レベルの上がる音がいつも五月蝿いのがなぁ……
サナリア・フォルブラナド・レーベルラッド(14) Lv.50万4600
種族:人間(覚醒++++)
HP 60兆2875億/60兆2875億
MP 3.0E+30/3.0E+30
AK ―
DF ―
MAK ―
MDF ―
INT ―
SPD ―
【固有スキル】無限転生 統合無意識 統合技『1.14k』 領域変化『第四段階』 予言
『覚醒』という部分が未だに良く分からいけれど、これがステータスを爆発的に上げている要因だというのは分かる。だけど、これはそれだけじゃない気がする。なんというか、これは生物としての『格』とは違う、意味のある事だと思うのだ。
ま、今のとこはまだどうでも良いけれどね。
とりあえず森の中を獣道を探しながら歩き出し、まずは正攻法で彼等を見つけようと思う。まぁ何処に当たるかは分からないけれど、手掛かりを探せばそう難しくはないだろう。
「ほら、早速発見だ」
「なによ?」
「これは……土に小さな穴だね」
「これは人工的なやつだよ。それも弓に弦を張る際に作る物だね。しかも周囲の草が少し不自然に刈られてる。おそらく此処で獲物を待ち構えて狩りをしたんだよ。弓を使うならエルフかアマゾネスってところかな?」
更に近くを散策すると、小さい川を見つけた。川辺に手を突っ込むと、幾つかの罠を見つける。
「川魚を捕まえる為の罠だね。木の皮と……これは何かの硬い身を刳り貫いたやつだ。魔道具を使わないとは中々原始的だね。泥でカモフラージュして隠しているし、スンスン……うん、臭い。人の臭いも付けてないから、これはこの種族のポピュラーなやり方かな。さっきの弓と合わせて、多分この付近にアマゾネスが居るね」
こういった手段を使って調べるのはもうかなり昔、それこそ数回転生したぐらいの頃に使っていた探索方法だ。懐かし過ぎてちょっと涙が出て来る。あの頃はまだ感情が剥き出しな性格だったから、それはもうギンギラギンに尖っていたね。
その後も私達は彼等の痕跡を辿ってどんどん進んでいく。枯れ木に自生していたキノコ、一定の間隔である獣道、空の開けた場所、矢や槍、剣の傷。
その間に、こういう世界特有の魔物にも出会った。
ゾンビウォリアー(―) Lv.25
種族:ゾンビ
HP 288/288
MP 0/0
AK 115
DF 55
MAK 0
MDF 0
INT 0
SPD 103
【固有スキル】再生
「うわぁ、ゾンビじゃない」
「死体……じゃないんだね。ゾンビウォリアーってあるけど」
「お姉ちゃん。あれは多分、冒険者だったんだと思うよ。ダンジョンにも偶に出るんだ。こんな森の中に出るのは珍しいけど……」
「ほーん……」
外見は完全にゲームに出て来る様な感じだった。ただ恰好は冒険者のそれで、腐った皮の鎧に寂びて折れた剣を持ってフラフラとこっちにうめき声を上げながら向かってくる。
……そういえば私って巫女なんだよ。ああいうのって宗教とかやってると僧侶とかが神の御力を使って清めたり出来たりするけど。この世界でも出来るのかな?
『浄化の概念で出来るでしょうか?』
「分からないけど、ちょっと試してみようか」
『領域変化』に『浄化』と『鎮魂』を設定し、発動。
「おぉ……あ……り………と」
ゾンビの身体はその場でボロボロに崩れ去り、中から白い煙の様な何かが飛び出した。
「な、なにあれ?」
「魂じゃないかな。多分だけど」
『この世界では魂が観測出来るのですね』
「ある意味驚きだよ」
肉体から解放された魂の行先か。”こっちの世界なら天国に直通”だったけど、こちらはどうなって……ん?
魂は空中高くまで上がったと思ったら、まるで何かに引っ張られている様な動きをし始める。というかあの引っ張られている方角は……
「ケイフル、ちょっと飛んで」
「え?」
「あの魂が引っ張られていくのを見たいの、お願い。ルル、直ぐ戻って来るからちょっと待ってて?」
「うん、わかった」
小さめのドラゴンになってその背中に飛び乗り空に上がると、私とディアナの推測は当たった。
「やっぱり……」
『ダンジョンマスターに引っ張られていますね』
『それがなんだってのよ』
「それは何とも言えないかな。まだ、ね」
ス~~っと魂はダンジョンマスターの上部まで上がり、遂には目視で確認出来なくなった。相変わらず上の部分は全て雲で隠れていて見えないなぁ……
「何となく嫌な予感するなぁ、あれ」
人の魂、ゾンビ、何よりダンジョンマスター。結び付けられたとして、その答えって……つまり――――――
ズガァーーーーーーーンッッ!!!
「え?」
「ちょっと、あいつの居たところよ!?」
突然の爆発音が下から響き、空を飛ぶ系の魔物が一斉に飛び立った。同時にルルが『幻獣化』したのだろう、見た目的にグリフォンっぽい姿で隣に飛んで来た。
「今のルル?何があったの?」
『アマゾネスだよ!!いきなり魔道具か何かで攻撃してきたんだっ!!』
「1人になった所を速攻で狙って来たか。おっと?」
『ちっ、弓を使って来たわね』
数十の矢が速度を落とさず一直線に私達を狙い撃つ。幸いケイフルの風で全て避けてくれるけど、よく見れば矢じりに毒々しい色合いの何かが付着してるし、本気で殺しに来てるねこれは。けど、こんな高い場所、普通なら豆粒以下にしか見えないのによく飛ばすよ。
まぁ見つかったなら丁度良いか。私は立ち上がり、いつもの様に剣を出す。殺すつもりは無いけど、無力化はさせないと話も出来ないだろうからね。ああ、縄も出しておこうか。
「じゃ、ちょっと行って来るね。終わったら呼ぶから」
『『え?』』
ピョンッ
「行ってきまあああぁぁぁぁ~~~~~……」
『『ちょっとぉぉぉおッッ!!??』』
上空5000m付近からのダイブにて、帽子を押さえながら戦場へと私は身を投げた。
『……どうすんの?』
『……お、降りようとりあえず。お姉ちゃん1人にしておけないっ!!』
『暴走癖あり過ぎでしょあの女……はぁ、契約するべきなのかしら』




