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前途多難

 今思えば、我ながら思い切ったことをしたと思った。

 けれど、なりふり構っちゃいられなかった。

 初恋の呪いとは言ったものだ、何年経った今でも俺にとって木乃香は掛け替えのない存在だった。

 だから、俺は気付けていなかった。

 そのとき、コノカがどんな顔をしていたのかなんて。


 ベルとはそれから少しだけ話した。

 普段ベルはコノカにしか見えないらしく、コノカが学校にいる間はずっとコノカの部屋で待機しているらしい。 

 本当に今日たまたま俺はベルが顕現したところを目撃したとなると、タイミングがいいのかもしれない。


 具現化したジュエルを集め、それをベルに渡す。

 それが俺に課せられた課題だった。

 そのときは簡単だと思っていた。

 だって、コノカだってジュエルを出したのだ、だから、他の人間なんてボロボロ出てくんじゃないかって思った。

 けれど、考えが甘かった。


 ベルにジュエルの常時可視する力と、それを触れることができる能力も分けてもらった。

 もらったはいいが……。


 コノカたちと別れ、俺は母親から洗剤を頼まれていたことを思い出し、慌てて走って買いに行った。

 帰ったら「寄り道してたでしょ」と怒られたが、ジュエルは出なかった。

 居間でお笑い番組見て大笑いしていた親父と兄貴も、笑ってはいるもののジュエルなんて出やしない。


 全て夢なんじゃないかって思えるくらいいつも通りの日常がそこには広がっていて、戸惑いが隠せないまま俺は一先ず風呂に入って寝ることにした。

 詳しいことは明日、コノカに聞いてみよう。

 ベッドの上、横になった俺は目を瞑る。

 やはり、夢のような出来事だったが夢じゃないのだ。

 とくんとくんと脈打つ心臓を抑え、ゆっくりと天井を見上げた。


 ベルは、木乃香の願いを叶えることを代償に契約したと言っていた。

 木乃香は悪魔と契約してまで何を叶えようとしていたのだろうか。

 そこまで考えて、ふと一つの可能性が浮かび上がる。

 木乃香が木乃香ではなくなった決定的な日、中学二年の林間学校。

 あそこで、何かがあったのではないだろうか。

 ……ベルは記憶を消すこともできるようなことを言っていた。

 頭の奥がずきりと痛む。

 考えるのが怖くなって、俺は逃げるように布団を頭まで被った。

 木乃香が悪魔と契約したくなるほどのことを俺は木乃香にしたのではないか。

 そんなことを考えることが嫌で、怖くて、酷く心許ない中俺は目を瞑る。

 人間というのは単純なもので、呆気なく俺は眠りに落ちた。

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