伸びをしていたら右手に見えない何かを持っていました。
この様子だと、仮に集合地点に着いたとしても今と同じだろう。
というか、道中このような人口建造物が見当たらなかったことを見て、ここが集合地点である可能性が高い。
目の前で石のごとく固まっている2人に聞いてみたいが・・
「どうしたものか。」
恐らく今動けているのは自分ひとり。これも俺の才能の力なのか?
そこで、ふと時間が止まった瞬間を振り返ってみる。
スライムとエンカウントしていたときだ。
スライムの先制攻撃を受け、反撃した。そこまでは普通だった。
その次、スライムが再び攻撃してこようとして来たときだ。
俺はあの地味に痛い攻撃を喰らいたくなかったので避けようとした。
足に力を込め、停止状態から走って避けようとした。
その瞬間に周りが止まったようになり、今もそれが続いている。
ん?待てよ。
確か、ギルドのおっさんに測ってもらった時のステータスではSPDがカンストしてたよな。
もしかするとこれは時間が止まっているのではなくて俺自身が高速で移動してることで周りが止まっているかのように見えているだけなのでは無いか?
そう思った俺は一度来た道を戻って10分ほど前にナイフでひたすら攻撃したスライムのところに来た。
考えた通り、スライムはまだ形を残していたが、切りかかったところがほんの僅かに砕けていっているのが見える。
「やっぱり、時間は止まっていない。俺が高速で動いているだけだ。」
ひとまず、この疑似時間停止を解除する方法を考えなくては。
「時間よ、動け!」
ダメ元でやってみたが、動かない。
主人公補正よ、何処へ行った。
時間だけはたんまりある今、そこまで急かす必要もないかと思い
日頃引きこもっていた俺は疲れてきて、呑気に伸びをした。
「なんだ、これ?」
伸びをした右手になにやら違和感があった。
見てみると、何もないのだが。そこには何かがある。
アストレアに来る前、ルナは空中で鍵を出現させひねっていた。
もしかすると。これも鍵かも知れない。
一か八か、俺は手の中に確かにあるそれを鍵のようにひねってみた。
カチッ。
俺の予想は正しかったようで、ルナのときと同じ音が響いた。
しかし大きな二枚扉は現れなかった。
ゴーン・・ゴーン・・・ゴーン・・・・
扉の代わりに現れたのはという教会の鐘のような鈍い音と、木の葉が風で擦れる音。
俺の目の前にいたスライムはこの音とともに消え、煙となった。
「なるほどな。この鍵が俺の能力のトリガーになるってことか。」
俺は見えないが確かに存在している鍵を手に、そう納得した。