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灰色猫とちびあるじ

白の魔女と黒の悪魔

作者: 昼行灯

あるじさま。

あるじさま。

今日の戦利品は綺麗な石です。

灰色猫は夢を見る。







ここは幸せの村。


村人全てが幸せに暮らしている。


皆が毎日好きなことをして生活している幸せの村。


今日は商人が来る日。豪華な食べ物や綺麗な服、町で流行っている遊び道具が運ばれてくる。


商人に渡す宝を用意しなくてはいけない。

「宝の回収をしよう」

「そうしよう」

村人たちは塔へと向かう。


灰色の塔。


あるじのいないこの塔の扉には鍵がかかっていない。ギギギギと音を立てて扉が開く。


真っ暗な室内に外の光が射しこむ。

そこには質素なテーブルがひとつと暖炉があり。奥にはベッドがひとつ...


ザッザッザと村人がテーブルの上に積もっている灰の山を掃うとそこには綺麗な宝石が転がっている。

「オォ、素晴らしい戦利品だ!」

「素晴らしい」

戦利品に満足した村人はバタンと扉を閉めて村へと戻っていく。



村人は言う。

「最近、戦利品が少なくなってきているな」

「そうだな」

「そろそろ新しいのが必要だな」

「そうだな」




商人がたくさんの馬車を引き連れてやってきた。

「やあやあ皆さん今回はどんな宝物を売ってくれるのかな?」

「商人さん。今回はこの宝石だ」

村人が美しく輝く宝石を商人へと差し出す。

「オオゥ、これは素晴らしい!」

「そうだろう。そうだろう。素晴らしい戦利品だろう」

「このような素晴らしい宝石ならば王様もお喜びになるだろう」

「そうかい。そうかい。では馬車の物はすべて貰っていいのかね?」

「もちろん!」


豪華な食べ物と美味しいワインで酒盛りが始まる。

「商人さんも一緒にどうだい?」

「いえいえ、私は次の商談がありますので失礼します」

幸せの村を後にする商人。

「フフフ、このような素晴らしい宝石ならば渡した馬車の十倍以上の金貨で王様が買って下さるだろう」

幸せそうな商人が町へ帰っていく。




ここは皆が幸せな世界。




ある日、幸せの村に白いローブの女が通りかかる。


魔女だ。


新しい魔女だ。


使い魔もいるぞ。


村人が優しく声をかける。

「お嬢さんお困りですか?」

「……いえ」

「泊まる所が無いならばとても良い場所がありますよ」

「……はあ」

魔女を灰色の塔へと案内する。

「どうぞ。どうぞ」

真っ暗な部屋の中へ魔女を押し込み扉を閉める。


ガチャン!

外から鍵をかける村人。

「新しい戦利品だ。新しい戦利品だ」

喜びの声をあげ村へと戻る村人。




暗闇の中に立ち尽くす魔女。

「…………光よ」

声と共に部屋に光が満ちる。


灰だらけの何もない部屋。

あるのは小さな生き物が這い出る隙間しかない暖炉と質素なテーブルと...粗末なベッド。


そして、ベッドに横たわる死体とそれに寄り添うように眠る灰だらけの猫。


「…………」


黙り込む魔女。その白いローブの中から黒い悪魔が顔を出す。

「どうしたのだ?」

「死んでいる...」

「なぜだ?」

「おそらく...この塔。少しづつ生命力を吸い取っている」

「あの村の周りだけ水や緑が豊富だったな」

「そして、残り少ない魔力の全てでこの子に真名(まな)を与えて使い魔から聖獣に進化させた」

「その結果がこれか。夢の中で何をしているかは知らんが成獣の魔力を削って生み出したアイテムをあいつらに持っていかれ。既に魔力がつきかけているではないか...愚かだな」


黒い悪魔が聖獣が寄り添っている亡骸を見る。

「なぜ逃げなかった?」

「……外に飛び出す勇気がなかったから」

「死ぬとわかっていて?」

「……うん」

「解るのか?」

「理解は出来る」


「…………」


黒い悪魔が白い魔女に質問する。

「村人はなぜ笑っていられるのだ?」

「私達が魔女だから」

「おなじ人だろう?」

「魔女と人は違うと思っているんじゃないかな」

「そうか」


「…………」


黒い悪魔が尋ねる。

「で、どうするのだ?」

「私は魔女で君は悪魔なのでしょう?」

「そうだな、悪魔は皆平等にだな」

「そうだね、愚かな魔女には罰を与えないとね」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

大きな音と共に灰色の塔が崩れ落ち緩やかな夢の終わりを告げる。




王宮:

「オォ! 美しき姫。私の溢れ出るこの気持ちを受け取って下さい!」

「まあ、王様。何をいただけるのかしら?」

王様がとても美しい宝石を姫に差し出す。と、みるみるうちに宝石がただの灰に変わる。

「まあ、王様。なんと言うことでしょう。私にはこの汚らしい灰がお似合いだとでも言うのかしら!?」

美しい姫は大怒りです。しかしそれより怒っているのは王様です。

「グギギギ、商人を捕らえてつれて来い!!!」



商人の大豪邸:

使用人が血相を変えて飛び込んでくる。

「旦那様、旦那様大変です!」

「どうした。騒がしい」

「商品のほとんどが灰に変わっています!」

「何を言っているのだ。バカらしい」

笑いながら金庫の中身を確かめた商人の顔色がみるみるうちに変わっていきます。

「こ、これはあの村から買った宝物...騙されたのか!?」

怒りで真っ赤になっていた商人の顔が瞬時に真っ青に変わります。

そうです。つい先日あの村から買った美しい宝石を王様に売ったばかりなのです。

「アアアアアアアアッ!」

王様を騙したと解った時点で商人は自分の終わりを理解します。

残ったお金をかき集めます。この町から逃げ出さなければ、そして自分にこのような破滅をもたらした者達に復讐を。



幸せの村:

灰色の塔が無くなってしまい。水が涸れ緑が枯れ始めました。

そしてこれからは戦利品が手に入る事がなくなったのです。

村人たちは不安でいっぱいです。






そして...

白い魔女が小さな子猫に話しかけます。

「肉体は完全に枯渇していたから逆に今度はその子から魔力を貰ったよ」

「みゃぁ!」


黒い悪魔が灰色猫に話しかけます。

「お前もただの猫に逆戻りなのだ。しかも毛並も灰色のままなのだ!」

「にゃあ!」


子猫と猫の二匹だけでどれだけ生きる事が出来るのでしょう?

これから辛く厳しい現実が二匹を襲います。



(あるじ)なのに子猫って、さしずめ「ちびあるじ」というところかな?

ちびあるじに魔女の加護が与えられた。


灰色猫はそのまま灰色猫だな! なんの捻りもないな!

灰色猫に黒の加護が与えられた。


灰色猫とちびあるじが声のした方を振り返るがそこには誰もいない。



ザッザッザッザと武器を持った兵士が道を歩いてくる。向かう先は幸せの村の方角だ。







あるじさま、あるじさま。


探検に行きましょう。世界中全てを探検しましょう。


灰色猫がちびあるじの頭をひと舐めする。

「みゃ!」

嬉しそうに目を瞑るちびあるじ。


一緒に世界中全てを探検しましょう。あるじが優しく笑いながら言う。


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