子供達のお祝い
昭和五十一年二月二十九日
真夜中だと言うのに、昨日は春一番が吹き、今も暖かくて強い風がピューピューと音を立てて吹いている。
先週の日曜日、デパートで注文した浩一の学習机と真由美の三輪車が届けられた。
『ワァーーーすげえー!これは僕の机?』
「凄いだろ、机 買ったんだから ちゃんと勉強しろよ」
『・・・・・・・』
「なんで返事が無いんだよ」
「さぁ机を組み立てるか、浩一も手伝え」
『うん分かった』
一方、真由美は新車の三輪車にまたがり はしゃいでいる。
「よーし完成したぞ!」
浩一の部屋の角に机を配置してあげた。
浩一は机が気に入ったらしく一人でニヤニヤしながら椅子に座り離れようとしなかった。
二人の子供達の嬉しそうな顔、我が子でなくても子供のそう言う顔を見ると気持ちが良い。まして我が子であるから、それを見て気持ちが明るくなる。
浩一は四月、小学校に入学する。
真由美も浩一が通っていた同じ幼稚園に入園が決まっていた。
二人共、入学・入園で準備を着々と進めているようだ。
もう、こんなに大きくなったのかと月日の経つ早さをしみじみ感じていた。
真由美は四才になったばかりなのに、食事の用意や、テーブルを拭いたり、茶わんを出して並べたり、箸を揃えたり、食事が終わった後も自分で片付けてしまう。
別に頼んだ訳でもないのに良くやってくれる。
そんな真由美の姿を見ていると不敏で可哀想で仕方なく涙が出てくる。
この世界で唯一の宝であり、今では子供達に励まされている。
人生とは、苦しみ、悲しみの中に小さな幸せを見つけ、その幸せを最大の幸せとする。
確かにそうだ、人間は悲しみや苦しみの中で生きている。それに負けた人間はダメ人間だと・・・
悲しみや苦しみに少しは慣れてきたけど、夢がないと言うのも寂しい。
もう一つは、子供達の幼稚園や学校の行事に行ってやれないのが最大の寂しさ、子供達は口に出さないけど、きっと寂しい気持ちだろう。
人並みの事をしてあげたい、人並みに甘えさえてやりたい、それが叶えられるならと思う気持ちと、もっともっと仕事に打ち込まなければと言う気持ちで思い悩んでいる。