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人生航路  作者: 智楼
57/63

孤児院 最後の運動会

私は久しぶりに金井に会った。

「おーぅ佐山、久しぶり~元気そうだな」

「おおおー金井、久しぶり~相変わらずだよ」

「子供達は元気か?来年は子供達、帰って来るんだろ?」

「二人共元気でやってるよ、浩一の卒業式が終わって、真由美の終業式か終わったら迎えに行く予定だよ」

「そうか、良いね。子供達、楽しみに待っているんじゃないか?」

「待っていると思うよ、長かったもんな~」

「本当に良かったよ。来年から親子三人で頑張らなきゃなぁ」

「今の俺なら何とか出来るよ、金井にも色々と世話になったなぁ」

「俺は何にもしてないって、一番 頑張ったのは子供達だろ」

「浩一・真由美には、本当にすまないと思っているよ」

金井と久しぶりに会い話しは尽きなかった。

「あっ!そうだ急なんだけど、来週の日曜日、空いてるか?」

「空いてるけど、何だ?」

「子供達の所の運動会がとうとう今年で最後だよ 一緒に行かないか?」

「最後の運動会か~見に行きたいねぇ~」

「じゃ みんなで見に行ってみようか」

「うん、それでいつなんだろ」

「来週の日曜日で朝六時に出発だな」

「そっか、そんなもんか、なら大丈夫だよ」

「よし、じゃぁ来週の日曜日よろしくな」

「おー来週な」


浩一・六年生 真由美四年生

十月四日、孤児院での運動会も今回で最後。

朝、金井と待ち合わせし孤児院へ向かった。金井は奥さんと娘・のり子ちゃんも一緒に運動会に来てくれた。

金井は本当に良くしてくれた。もちろん、奥さんも良くしてくれた。

のり子ちゃんを見ていると、真由美がまだ赤ちゃんだった頃を思い出す。

真由美が赤ちゃんだった頃、可愛かったなぁーと思い出させてくれた。

浩一・真由美と別れたその日から、本当に一日も子供達の事、忘れた事はない。

八時、孤児院に着いた。

浩一と真由美は校庭で何か準備をしていて、私達が来てる事に気が付いていない。

そして九時になった。

「只今より開会式が始まります児童の皆さん・幼児の皆さんは中央に集まって下さい。見に来てる親御さん方も一緒に参加して下さい」

アナウンスが校庭に響き渡る。

私達も後ろの方に並び参加、その間、浩一は何度も後ろを振り向き、私を探しているようで見つけた時は、小さく手を振ってくれた。

開会式が終わると、浩一・真由美が走ってきた。

『もーぅ、お父さん、見つけるの大変だったよ』

「そうだろ、後ろの方にいたからな」

『だから、見つけにくかったんだ。あっ、金井おじさんだぁ』

「今日はみんなで応援にきたからね」

『本当だ』

『ねぇねぇ、お父さん、まゆ、今日は玉入れに出るからね』

「そうか、お父さん見てるからね」

いつの間にか真由美もパパからお父さんって言うようになったのか・・・

「浩一も真由美も大きくなったなー」

『まゆ、金井おじさん達も来てるよ』

『あっ、金井おじさん』

「二人共、今日はみんなで見てるから頑張れよ」

『分かった、じゃぁ僕達行くね、まゆ行くぞ』

『うん』

子供達は走って行ってしまった。

「佐山、子供達 立派になったなー」

「そうだろ、俺に似ていい子に育ってくれたよ」

「違うな!お前に似たら、あーはならねぇよ」

「なーんだよ金井、少しは似てるって言ってくれよ」

「あっ!いけねっ、つい本当の事言っちゃったよ」

「まったく気の利かねぇ男だな」

「アハハ 俺は嘘と屁はこいたことねぇ」

「ほーら そこが嘘だって言ってるんだよ」

やっぱり金井と話しすると、こんなに楽しいものだと心から笑った。

「あんなにいい子になってるんだから、来年から一緒に生活しても大丈夫だよ」

「来年は中学生になるからな、 少し不安はあるけど一生懸命やってみるよ」

「二人の子供達、きっとお前の事 助けてくれるんじゃないか?」

「そうなったらいいんだけどな~」


「間もなく玉入れが始まります」

真由美は赤組。

「真由美頑張れー」


赤組 白組に分かれて玉入れが始まった。

「白組 優勢です、赤組頑張って下さい」

♪パン・パン♪

「これから玉の数を数えます」

赤・1・2・3・4・5・・・・・18・19・20・21

白・1・2・3・4・5・・・・・18・19

「赤組が逆転して赤組の勝利です」

真由美の組が勝った。


「次は上級生の綱引きです。お父さん、お母さん方もご協力お願いします」


「金井、綱引き出てみるか?」

「そうだなーやってみるか?」

「佐山さんも、あなたも明日は、あちこち痛いって言い出しそうね」

「間違いなく筋肉痛になるな」

「まぁ、頑張ってみるか」

二人は、浩一・白組の後ろに付いた。

「浩一、お父さん達、後ろで引っ張るから」

『分かった』

「綱引きなんて久しぶりだなぁー何年ぶりだろう」

「俺なんか自衛隊の時以来だな」

「じゃぁ、一丁頑張るか」

「おう」

「それでは始めます」

ヨーイ♪バン

「お互い引っ張って下さい」

「赤組・頑張れ 白組・頑張れ」

♪バンバン♪

「結果・白組の勝ちです」


「浩一やったね」

『やったね!お父さんもおじさんも疲れたでしょ』

「年取ると、こう言うスポーツはダメだなー」

「あーもぅクタクタだよ」


「これからお昼休憩です」

子供達は走って来た。

『お父さん、お腹空いたね』

『お父さん、どうだった?僕も腹減った』

「お前達、頑張ったなー、今日は、金井のおばさんがお弁当 作ってきてくれたから、みんなで頂こう」

『うわー美味しそう』

『いただきます』

「さぁ、真由美ちゃんも食べて」

『はーい、いただきます』

「お前達、午後もあるんだから食べ過ぎるなよ」

「浩一はリレーのアンカーだから、食べ過ぎて走れなくなっても知らないからな」

『分かってるって、でも美味しいから食べちゃう』

「真由美は、休憩終わったらダンスだよ」

『お腹いっぱいでダンス踊れるかな~』


「間もなく休憩が終わります」

『じゃぁ僕達、戻るね、まゆ早く行くぞ』

『お兄ちゃん待って~』

「佐山、見てみろよ、浩一しっかり真由美の面倒見てるじゃないかぁ」

「浩一、俺に似て優しい子に・・・」

「な~に言ってんだよ、そこは佐山に似てねえよ」

久しぶりに金井と会い二人で笑った。


「午後の部、ダンスが始まります、児童・幼児は集まって下さい」

真由美の出番だ。

♪・♪・♪・♪・・・・♪

音楽が流れダンスが始まった。

「真由美ちゃんダンスしてるわよ」

「やっぱり女の子がダンスしてると可愛いなぁ」

「うちの娘・真由美は特に可愛いだろー」

「佐山も俺と一緒で親バカだな」

「まぁそんなもんだろ、父親って」

「そうだな」


「次はリレーです。生徒さんは集まって下さい」

運動会、最後の種目 リレー

浩一はアンカーで四番目に走る。


位置についてよーい♪バン

四人一組で一人50メートル。アンカーは100メートル。

浩一の組は最初から飛ばし独走、バトンもうまく次の子に渡った。三番目の子も足が速い、そして浩一の番。

「浩一、頑張れー」

「そのままゴールだぞ」

「浩一、余裕の顔してるな」

「あー浩一は逃げ足だけは速いんだよ」

「やっぱりな、そう言うところはお前に似てるな」

「そんな事ないよ、似てるところ他にもあるだろ」

浩一は一位のままゴールした。

そして閉会式、「今年は白組が優勝しました。白組みの皆さん、おめでとうございます」


孤児院の運動会も無事に終了した。


私達が帰り支度をしていると浩一・真由美が走ってきた。

『もう帰るの?』

「あーそろそろ帰らなきゃだな」

「浩一君も真由美ちゃんも、あと少しだから頑張るのよ」

「そうだぞ、あと半年だから、お父さんに心配かけるんじゃないぞ」

『もぅ分かってるよ、なぁーまゆ』

『大丈夫だよ、ねぇお兄ちゃん』

「じゃぁお父さん達 帰るからな、あと少し良い子にしてるんだぞ」

『分かった』

子供達に別れを告げ、金井と駐車場まで歩いてきた。

「金井、今日は運動会に付き合ってくれて悪かったな」

「なーに言ってんだよ、子供の成長は楽しみの一つだからな」

「これで俺の決心が付いたよ。来年、必ず迎えに行って親子三人で生活するから」

「そうだな、子供達もその方が良いと思うよ」

「とにかく頑張ってみるよ、やれるだけ やってみるから」

「また何かあったら遠慮なく電話してこいよ」

「その時は、そうさせてもらうよ」

金井は栃木の実家に寄るって言ってそこで別々に帰った。

「佐山、気を付けて帰れよ、じゃあな」

「おぅ、お前も気を付けろよ、実家によろしく言っておいて、じゃあな」

そして一人 我が家に帰って来た。

浩一・真由美、あと少し我慢してくれ、必ず真由美の終業式が終わったら迎えに行くから、それまで待っていてくれ。

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