学芸発表会
三月二日
♪チーンチリチリチリチーン チーンチリチリチリチーン♪
夕飯を済ませ、夜八時を過ぎたところだった。
「もしもし」
「もしもし私だけど」
「おー由美子か、今度はいったいなんだ?」
「あのー今度の五月の連休は子供達、帰って来るの?」
「あー子供達か、孤児院から許可が下りたら、連れてくるつもりだけど」
「それなら、五月の連休、子供達と一緒に横浜に来てくれないかしら?」
いきなり電話してきて、三人で横浜に来てほしい何てどう言う事なのか・・・
「まぁ、これと言って出掛ける予定もないし、三人で行くよ」
「本当に?じゃぁ 楽しみに待ってるわ」
「うん それで今、由美子は何か仕事しているのか?」
「仕事はねぇ この間、辞めちゃったわ、でもまた探すから」
「そうか、早く見つけないと生活、大変だな?」
「まぁ何とかやってるから大丈夫」
「そうか、大変だろうけど頑張れよ」
「ありがとう、じゃ五月 待ってるわね」
「分かった、じゃあな」
「じゃあね」
私は考えた、由美子はいったいどんな生活を送っているのだろうか?
しかし、そんな事は私には関係ない。
三月十五日 孤児院で発表会だ。
いつものように朝早く車を走らせ孤児院へ向かった。
会うたびに、浩一・真由美の成長に驚く。孤児院に着いた時から真由美は、私にべったりとくっ付いて離れようとしなかった。浩一は一人前に男らしくなったが、真由美はまだ甘えがあるのかもしれない。
真由美の出番はそろそろ、浩一の出番は午後の部昼食の後らしい。
今日の発表会では、見に来てくれた親御さん達にも昼食が用意されていた。
『お父さん、こっちだよ』
浩一は大きな声で呼び、座る席まで用意してくれ、みんなで色々な物を食べた。
この二人の愛児が居なかったら、どうなっていたか分からない。
この二人の愛児が居たから、人並みの生活が出来たのだと思う。
『ねぇ、お父さん、あと一年ここに居れば、お家に帰れるんだよね?』
『まゆも帰れるの?』
「うん、そうだよ」
浩一も真由美も嬉しそうだった。
『早くお家に帰りたいなー。お父さんと一緒に暮らしたいなー』
『まゆも早く帰りたいなー』
「もう大丈夫、浩一・真由美、親子三人で上手くやって行ける。あと一年、我慢して頑張ってくれ」
『うん、僕達 頑張るからね 頑張るよなぁ~まゆ』
『うん、まゆも頑張る』
早く一年が過ぎないかと本当に心から思った。
今の私は、今までの私ではない、もう清瀬で飲んだくれている私ではなかった。
五月の連休には、子供達を連れて三人で横浜に行く事になっていたが、今日の発表会で浩一・真由美に会い
一日過ごした時、やっぱり横浜に行くのは止めようと思った。
なぜなら、由美子の生活が少し乱れ、いくら愛してる女でも、この女は子供達にとって、いい母親だとは思わなかったからだ。
私の人生は終わった。
これからは、浩一・真由美のために一生懸命やるつもりだ。
浩一・真由美がどのような人生を辿るか分からないが、あんな母親のような人生は送ってもらいたくない。
真由美は男から男へと流れて行くような事はしないでくれ、二人共ちゃんとした人生を送ってもらいたい。
今日の学芸発表会は・・・
浩一は金賞。
真由美は準優秀賞。
私は親として本当に嬉しかった。
しかし、真由美は帰るまでべったりだったな。




