孝の決心
本当に九月は良く働いた。日曜日も祭日も仕事に出た。
浩一・真由美そして由美子と別れたその日から考え方が変わった。用のない日、たとえ日曜日でも祭日であろうと仕事があれば働く。
もう外に酒を飲みに出歩かない。
一生懸命働けば、少しは浩一・真由美に対して言い訳が出来るような気がした。
そして、由美子を見た時、これが妻? 愛する二人の子供達の母親だったのかと思った。
なぜなら、自分の子供の姿を見て、この子供達の幸せを考えるのが母親であると思うが、由美子にはそのような事はないように感じた。
今、考えると由美子には、きっと横浜に好きな人が居ると思う。そうでなければ、子供達を置いて自分一人で
実家に行くなど考えられない。この二人の子供達は由美子が生んだ実子なのに、常識的に考えて、実家や兄弟より、この子供達の方が大事だと思うが、まして二年ぶりに会う実の子。
実家より、もっともっと大事な事ではないだろうか?
由美子の考えは理解出来ない。
愛する二人の子供達は、親の身勝手なために親元を離れていると言うのに、自分の考えよりも、まず子供達幸せを一番に考えるべきと思うが・・・
今回、由美子に会い、姿を見てこの女は子供達の母親として相応しくない。
話す事が無知で、態度が下品、教養のない女。
しかし、このような女でも私の妻であり、愛する二人の子供達の母親には変わりない。
きっと私は、この女以外の女を愛する事は出来ないだろう。
そんな私も無知でバカな男の一人であろう・・・
由美子が来たあの日、自分の体を隠すような仕草をしていたが直ぐ気が付いた。お腹が少し大きいように見えお腹に子供がいるのだろうと分かったが、あえて口には出さなかった。
心の中で、これが外れていたら、気のせいならと思った。だからと言って、誰が何をしようが口出す事ではない。
愛する浩一・真由美 いつもお前達の事を思い考えている。楽しい時、浩一・真由美が一緒に居る時は自分を忘れ本当に幸せだと思う。
なぜ一緒に生活出来ないかと二人の子供達は言うけれど、仕事はトラックの運転手、朝は早いし帰りの時間は分からない。帰りが遅くなった時、お腹を空かして帰りを待っているお前達の事を考えると仕事などしていられない。
父が居ない時でも子供達二人でやっていける時まで別々に生きる事を決めた。
小さなお前達では、三人一緒に生きて行く事は出来ないと考えた。
この考え方が正しかったと思う。
浩一・真由美 本当にすまない事をしたと思っている。でも、これも人生、人間生きて行く以上、色々な事がある、こんな事に負けず一人前の人間になって生きて行く事が、心の中の叫びであって、きっと浩一・真由美は、
そうしてくれると思っている。
偉くなんかならなくていい、人並みの人生が、そして少しの幸せがそこにあり、みんな仲良く生きて行く事が出来ればいいと思う。
毎日一人で生きて行く事がないように、一人で生きて行く事は本当に寂しい事だ。
浩一・真由美 この父の言わんとする事を良く理解して、清く正しく美しくをモットーにこれからの人生を送ってもらいたい。
浩一・真由美と三人で一日も早く一緒に暮らせますように・・・




