発表会
昨晩から雨が降り続いていた。
六時前から目を覚まし空を見ていると、この雨では仕事出来るかな?
六時五十三分 会社へ電話してみると、社長から「この雨では分からないから少し待機」と言われてしまい、その後の電話で仕事は休みになった。
家に一人で居ると子供達の事を思い出してしまう。
二月の休日は、浩一・真由美を我が家に連れて来て、楽しい日は二日間だけだったけど、子供達と一緒に居る事が一番楽しい時だ。
迎えに行く時は天国で、送りに行く時は地獄、何とも悲しい、寂しくて仕方がない。
そんな事を考えていると、郵便やさんがポストに何か入れた音が聞こえ、早速ポストを見に行くと、封筒が二通届いてた。
部屋に戻り開けてみると、浩一と真由美からの手紙だった。
「三月十六日、孤児院の発表会 必ず来るように!」
二人共、手紙の内容は一緒、こうして一行だけ書いてあった。
子供達が必ず来るように!と言うなら行かなきゃと思い仕事の休みをもらった。
当日、私は、いつものように早く目を覚まし孤児院へ向かった。
孤児院に着くと沢山の親御さんが見に来ていた。きっと、この親御さんも何らかの理由で子供達を孤児院に預けているんだ、私一人が苦しい思いしてる訳じゃないいんだと思った。
そんな事を思いながら、空いてる席に座った。
今日は、ここに居る子供達全員での演劇、みんな一生懸命 練習したのだろうと思うと涙が出てくる。
一番小さな子は三才くらいだろうか、お兄ちゃんお姉ちゃん達と一緒に頑張って演技をしていて最後は
子供達 全員での合唱、本当に素晴らしかった 全てが終わり帰ろうとした時、
『お父さん』
『パパー』
浩一と真由美が来た。
『お父さん、劇どうだった?』
「あー凄い良かったよ」
『まゆも、いっぱい練習したんだよ』
「そうか、頑張ったなー」
『お父さん、もう帰るの?お父さんが帰っちゃうのやだな~』
『パパ、お家に連れて行って』
しかし、こうして、しきりに言っているのは浩一・真由美だけではなく、発表会を見に来ていた親御さんの子供達も「お母さん一緒に帰りたいよ」「お父さん家に帰りたい」『お父さん、いつになったら迎えに来てくれるの?」「お母さん、お願い、お家に連れて行って」子供達が一生懸命言っているのが、あちらこちらから聞こえてきて、泣きじゃくる子も居た。
そして私は浩一と真由美に「あと二年、待ってくれ」それだけ言い孤児院を出た。
二年経つと、浩一は中学生、真由美は五年生、きっと私が居ない時でも家で上手くやって行けると思った。
その時は必ず、家族三人で生活しよう。
そろそろ、子供達も春休みに入るが、孤児院ではニ・三日くらいしか外泊許可が出なかった。
前もって色々と計画していたが流れそうだ。
仕事よりも子供達の事で頭がいっぱいで、子供達も今来るか、今来るかと待って居ると思うと気が気ではない。




