年末年始⑤
今年は入院したため、少し予定が狂ってしまったが十二月二十八日で仕事納め。
何とか正月を過ごせそうな見込み。
十二月二十九日、子供達の待つ孤児院へ。
一日でも早く、一日でも多く子供達と一緒に居たいと思い車を走らせる。いつものパターンだ。
孤児院に着くと、浩一と真由美は荷物をまとめて玄関で待って居た。
『お父さん、待ってたよ』
「おっ元気そうだな じゃっ行くか」
『ヤッター、お家に帰れる』
『まゆ、車に乗ろう』
『うん、パパ、早く行こう』
「あー分かった、分かった」
孤児院の先生に挨拶をし一路、我が家へ
車の中には、浩一のお気に入りのアニメ大全集のカセットテープが何本か入ってる。
『お父さん、このカセットテープかけていっ?』
「おう!好きにしな」
行き帰りの車の中で良く聞いていた。私は違う曲が良かったのだが子供達が聞きたいなら仕方がない。
浩一と真由美はアニメの歌を歌いながら楽しそうで、この時ばかりは子供達の好きなようにさせた。
途中レストランに寄り楽しい食事、そして家の近所のスーパーに寄って浩一・真由美の好きな食べ物を沢山買って我が家に着いた。
大晦日
みんなでお風呂に入ってお湯に浸かりながら、おしゃべりしたり、出てからテレビを観ながら果物を食べ、親子
三人 水入らずの夜、何も考えず子供達の話す事、やる事が段々と一人前になっている姿に驚いた。
これから三人はお正月を迎え、たった八日間だが一緒に居られる幸せで胸がいっぱいだ。
とうとう年が明けた。
元旦、実家に新年の挨拶に行き、二日と三日は家でのんびり過ごした。
「お前達、明日は遊園地に行くぞ」
『お父さん、本当に?』
『ヤッター、まゆ、観覧車に乗りたい』
『僕、ジェットコースターに乗る』
「好きな乗り物 乗ったらいいよ、お父さんも一緒に乗るからさ」
『えー、お父さんジェットコースター怖くないの?』
「一番大好きな乗り物だ」
『へえ~』
明日、出かけられる事に子供達は嬉しそうだった。
四日、少し早めに起きて三人は遊園地に遊びに行き、夕方まで楽しんで、帰りに清瀬に寄り、おもちゃ屋に行って、テレビゲームを買ってあげた。
これで子供達も家に来た時 退屈しないだろう。
夕飯はレストランで食事をして、本当に人間らしさを取り戻した。
家に着くなり子供達がワクワクしている事に気が付いた。
『お父さん、お父さん、早くテレビゲーム付けて』
「ちょっと待ってろ!」
『パパ、早く早く』
「分かった、分かった」
子供達にせかされ、説明書を見ながらテレビに繋いでやった。
浩一・真由美の楽しそうな姿を見ていると、まるで由美子が居た時のように思えてならない。
本当に由美子が居てくれたら何と素晴らしい事だろう。そうすれば、私や子供達も今の生活も随分、変わっていたかもしれない。
そのような事が頭の中をかすめ、毎日が楽しければ楽しいほど月日が過ぎるのが早い。
しかし、一番悲しいのは、明日 子供達を孤児院に送って行かなければならない。明日になれば、可愛い子供達と少しの間、別れ別れになると思うと、何と言っても一番悲しい。
これ以上の悲しい事はないだろう。
今年の正月は、子供達に出来る限りの事をした。子供達も喜んでくれたに違いない。
一月五日 子供達を孤児院に送りに行き別れを告げた。
今日から、また一人かと思うと涙が出てくる。
まだ、この車の中に浩一と真由美が居るような気がして、話しかけてみたが返事はなかった。
今まで一緒に来た道、帰りは一人。
ここで食事をしたなあー、ニ・三時間前は子供達と一緒だったのに・・・
こんな事を思っていたら家に帰り一人になるのが嫌で平田に電話した。
♪トゥルルルル♪トゥルルルル♪
「もしもし平田か?俺だけど」
「おー佐山かぁ、どうしたんだよ?」
「今、子供達を孤児院に送って来たんだけど、何か寂しくてさぁ」
「そうか、じゃあ酒でも飲みに行くか?」
「酒いいなー、行くか」
平田と初めて外で酒を飲んだ。
そして、六日は吉山と飲み、七日は土屋と飲み、八日、一人になった。
友人と酒を飲んでいると気が紛れるような気がする。
一月十一日 初仕事
また今日からいつもの日が続く。
今度いつ子供達の所に行けるだろう?
一生懸命働いて、一日も早く可愛い子供達と一緒に生活しよう。明日も早いから寝る事に・・・
子供達の夢でも見られるといいなー。




