連休
二月十日~十二日と連休が続く、この三日間、仕事を休んで子供達と楽しく過ごそうと考えていた。
少しでも父親らしい事をしてやりたい、子供達の喜ぶ顔が見たい、一番の楽しみは子供達の喜ぶ顔を見る事が何より生き甲斐である。
父親として・・・イヤ!父親とは言えないだろう。人間として一番恥ずかしい事をしてしまった。してはならない事をしたのだ。
私の気持ちより子供達の気持ちを考えると・・・
浩一のあの笑顔、真由美のあの寂しそうな顔「パパ、孤児院に帰りたくない、お家に居たい」と言われると、胸が張り裂けるように苦しい。
このまま三人で死んでしまおうかと時々思う事が増えた。
浩一・真由美 母親が居ない気持ちは辛いだろうが、これから先もっともっと辛い事が沢山ある、それに一つずつ打ち勝って生きて行かなければならない。
これくらいの事でダメになってしまうなら、これから先も、少しくらいの悲しい事、苦しい事には勝てない。
お前達の母親みたいな気持ちにはならないでくれ!
これが何もしてやれない無力の父の一つの願いだ。
何事にも負けない気持ちの持ち主になってくれ。
十日の朝 早起きし、部屋を綺麗に掃除して昼食を済ませ、我が愛児、浩一・真由美の待つ孤児院へ向かった。
約二時間程で孤児院に到着。
車を見つけた真由美。
『パパーパパー』
「いい子にしてたか?」
『うん!お家に帰るの?』
「そうだ」
直ぐに絡みついてくる、何と可愛いのだろう、この子が私の子だ。
何故、こんなに可愛い子供達と別れて寂しい気持ちで生活しなくてはならないのだろう?
『パパー』
しばらくすると浩一が走ってきた。
『僕達、お家に帰るの?』
「そうだよ、家に帰るんだよ」
浩一の目が、もの凄く光ったように見えた。
こんなに家に帰りたがっている我が子を見るとどうしたら良いか分からない。
私に春が来るのはいつだろう?
子供達を車に乗せ我が家に帰って来た。
夕飯を食べ、テレビを観たり、楽しい三日間を過ごした。楽しい時間は過ぎるのが早い。
今日、子供達を孤児院へ送って行かなければならない。
「お前達、そろそろ行くぞ」
『えーもう行くの?』
『ずっとお家に居たい』
『パパと一緒に居たい』
「もう少し我慢してくれ!」
何とか子供達を説得させ孤児院に送って行った。
数日後・・・
子供達の事が頭から離れなくて、子供達の声が聞きたくて、孤児院に電話をすると少しの間、子供と話が出来るのだが、今日にしようか、明日にしようかいつも迷う。
もしかしたら、子供達がテレビを観ている時間だったらと思うと中々電話が出来ないでいるが、今、思いきって孤児院に電話をした。
♪トゥルルルル♪
「もしもしI・V院ですが」
「もしもし佐山ですがお世話になってます。浩一と真由美と話しがしたくてお願いしできますか?」
「大丈夫ですよ、少々お待ち下さい」
『もしもしパパ』
「浩一か!元気か?」
『うん!元気だよパパは?』
「パパは元気だよぉ 真由美も居るか?」
『居るよ、代わるね』
『パパ』
「真由美も元気にしてるか?」
『うん』
孤児院の決まりで、あんまり長く話す事が出来ない。とりとめの無い会話を十分して、・・・・・・
「真由美 いい子にしてるんだぞ」
『うん分かった』そして浩一
「浩一、あまりいたずらするなよ」
『分かった』
「じゃ切るぞ、またな」
『バイバーイ』『ババーイ』
意外と二人共、元気で居ると聞いて安心した。
子供達と話をしていたら目から涙が出てきて電話を切ったあと、一度に涙が溢れ一人で思いっきり泣いた。
いくら泣いても二人の子供達への罪など消えはしない。
今日と言う日ほど、あの女が憎いと思った事はない。
どうして二人の子供達が、このような酷い目に合わなければならないのだろうか?
その事を思うと殺してやりたいくらいだ、殺しても殺しても殺し足りないくらいの思いだ。
再度 会った時には必ず殺してやる。
自分の為にも・・・二人の子供達の為にも・・・
もし、これが実現してしまったら、子供達よ!馬鹿な父親と思い、父親の事は忘れ、強く、正しく、人並みの人生を送って欲しい。




