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人生航路  作者: 智楼
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妻の家出

また明日、治療のため真由美を病院に連れて行かなければならない。

孝と由美子は、火傷の跡が残らない事を願っていた。そして通院して約二週間目の夜の事、

「パパ!明日も真由美を病院に連れて行くから、浩一も仕事に連れて行ってくれない?」

「かまわないよ」・・・・・・


朝早く目を覚まし浩一の部屋へ。

「浩一、起きろ!パパと一緒に仕事行くぞ!」

眠たい目を擦りながら、ボーっとしている浩一、まだ四時を過ぎたところだ。

二人で朝ご飯を済ませ、五時に家を出た。

「浩一、パパが運転している時、仕事をしてる間は大人しく座っているんだぞ」

『わかった』

「オシッコは大丈夫か?」

『うん、お菓子食べていい?』

「あーいいぞ!」

浩一は、何て良い子なんだ、これならトラックの助手席に居ても安心して仕事が出来る。

また、仕事をしながら真由美どうかな?

結果が気になって仕方がなかった。

今日は少し早いが午後二時に仕事を終わらせ帰る事が出来た。

『ただいま~』

・・・・・・・・・・

『あれ~?』

『パパ!ママと真由美、まだ帰って来ないね』

「遅いなーでも、その内に帰ってくるだろ」


しばらくして気が付いてしまった。

良く見ると、鏡台の上の化粧品が全てなくなっている、もしやと思いタンスを開けてみると、由美子の洋服も真由美の洋服も空っぽになっている。

嫌な予感はしていたが的中してしまった。

由美子は、三才の真由美を連れて何も言わず姿を消した。

家出である。

理由も分からず、五才の浩一を残し、由美子は何を考え、これから先どうするのだろう。

今は分からない。

私はどうでもいいが、浩一・真由美がこれからどうなるのかと思うと可哀想で仕方がない。

『パパ!ママ遅いね~』

「うーん、そうだね」

これしか答える事が出来なかった。

罪もない子供達が親の都合で不敏な思いをするのかと思うと、胸が引き裂かれる気持ちだ。

その夜、実家の母に電話した。

♪トゥルルルル♪

「もしもし俺だけど」

「もしもし、孝かぁ 元気なの?」

「元気だけど大変な事になったよ!」

「ん?何んだ どうかしたの?」

「そうだよ ちょっと聞いてくれよ、由美子が真由美を連れて出て行ったんだよ」

「また、お前達ケンカでもしたんだろ?浩一はどうしてるんだ、居るのか?」

「いや違う何がなんだか分からないんだよ、浩一はここに居るけど」

「そう それで何か思い当たる事とかあるんじゃないのけ?」

「んーそれが思い当たる節がないんだよー」

などと電話でああでもない、こうでもないとながながとニ十分くらいは話したと思う 何か私に原因があるのではないかと、母に叱られたりもしたが、無いもは無い、とにかく家に来てほしいと頼み、実家に迎えに行った。

そしてその夜、母と寝るまで由美子の事、真由美の事、十二時頃まで話し合った。

「これじゃーしょうがない、しばらくの間は私が浩一の面倒みるよ」

母に有り難い気持ちでお願いし、今夜は母も疲れただろうから、今日はこれで休む事にした。

一人になり、ベットに入ってから涙が出て、拭いても拭いても止まる事も知らず、由美子と真由美に逢いたくて、色々な事を思い出しているうちに夜が明けた。

鏡を見ると、目が赤く、目がくぼみ、体がだるい。

今日は仕事を休もうかなーと考えたが、もし由美子と真由美が帰って来た時に金がなくてはどうしようもないと思い、無理して仕事に行く事にした。

仕事に行く時間になると母も起きてきた。

「じゃあ仕事に行くけど浩一頼むね」

「はいよー!気を付けるんだよ」

「うん、分かった、行ってくるょ」

「はーい、いってらっしゃい」

会社に着くまでの時間、由美子の事、真由美の事を考えていたら涙が出そうになる。

一日の仕事を終え、何となく家に帰る気がしない、家に帰っても由美子と真由美は居ない。

母と浩一は寝てしまい、夜遅いが一人外に出た。

星が美しい。

一人になって、夜空を見たのは久しぶり、そんな事を思っていたら心が寂しくなった。

由美子は何処に居るんだ?

真由美はもう寝たかな?

幼い兄妹を別々にさせないでくれ。

誰も居ない夜の外・・・・・

静かに泣く、なんて弱い男だとつくづく思った。

[寂しさに月に語りて過ぎ日の恋の哀愁に 今日も濁りなく別れた妻を想う丘]

由美子よ!

お前の子供、浩一は今日も元気に幼稚園に通っている。

由美子よ!

お前の子供、真由美をくれぐれも頼む。

しばらくして家に戻り眠りに付いた。

三日経っても由美子から何も連絡がない

今頃、何をしてるんだろう?心配で仕方がない。今、出来る事は心配してやる位しか出来ない。

無能な男、しかし由美子を愛してる気持ちは、この広い世界で一番だ。

ボーッとテレビを観ながら、そんな事を思っていた。

『パパ、おばあちゃん、おやすみ!』

「おう!」

「はい、おやすみ」

浩一は部屋に行き寝てしまい、午後十一時半頃、そーっと浩一の部屋に行ってみる、寝顔を覗きこむ、

その寝顔を見てると、これから先どんな辛い事があろうとも、一人前の男に育つまで頑張るつもりだ。

一人で考えていると由美子の存在がいかに大きいか良く分かる。

しかし、由美子が羨ましくて仕方がない。

嫌になったから、生活が苦しいからと言って、何もかも捨てられるその気持ちが理解出来ない。

人の親として当然、人生は確かに儚い、子供のために自分の人生、犠牲になるのだから。

由美子!そんな気持ち分かるか?

なぁ!由美子・・・

もう希望も何もなくなったけど、由美子がこの家を出て行った気持ち少し分かるような気がする。

毎日、育児に家事、それから、金・金・金の連続だったな?

由美子を幸せに出来なくて悪かった、許してください。

浩一のために、もう泣かない!

浩一が心の支えになってしまったが、ただ心に残るは真由美の事、気になって、気になって・・・・・

真由美に会いたい、真由美の事を思うと涙が出てくる。

どうか元気でいてくれ!幸せになってくれ!父からのお願いだ。



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