暴力事件
五月に入って直ぐの日曜日の夜だった。
♪チーンチリチリチリチーン チーンチリチリチリチーン♪
「はい もしもし佐山です」
「もしもし私」
「あっ由美子?一体何の様だ」
「五月二十日~二十二日の三連休 そっちに行こうと思う」
由美子から電話でこっちに来たいなんて、一体どうしたんだ?
「それなら大宮まで迎えに行くよ」
「そうしてくれると助かる」
「それで・・・浩一・真由美に会えないかしら?」
「孤児院に電話して外出許可 取れるか聞いてみるよ」
「お願いね!二十日 朝八時に大宮着く予定だから」
「分かった、じゃ、その足で子供達の所に行こう!」
こうして、電話を切った。
私は直ぐ孤児院に電話をして許可を取った。
二十日の朝七時前に家を出て車で大宮駅に向かった。
少し早く着いたが由美子は外に立って待って居る。由美子を車に乗せ、子供達が待って居る孤児院へ。
孤児院に着くと子供達は待って居た。
『パパー』
『あれ?ママ?何でいるの?』
親子四人で会うのは、しばらくぶり、本当にしばらくぶりである。
『パパ!これからどこ行くの?』
「そうだなー遊園地でも行ってみるか?」
『本当に?ヤッター』
『ヤッターーー』
浩一も真由美もテンションがあがった。
一緒に乗り物に乗ったり、レストランで食事をしたり、時間が経つのを忘れるくらい楽しく過ごし、夢を見ている気持ちだった。
そして、二十二日、子供達を孤児院に送り、由美子は再び横浜へ帰ってしまった。
一週間後の土曜日
何を考え、何をしたのか分からず、一人でまた、由美子の居る横浜へ行った。
その時は、子供達の事を忘れ、きっと、二度と川越の家には帰らないつもりで死の旅に出たような気がする。
その夜、楽しく酒を飲んでいたのに、由美子の気持ちが私にあると分かったのに、どうして、どう言う事になったのか分からないが、ケンカをして由美子に暴力を振ってしまった。
近所の人が怒鳴り声を聞いて通報したのだろう、警察騒ぎになり、初めて我に返った。
由美子に手を挙げた事に間違いはなさそうだが殆んど覚えていないし、なぜ暴力に発展したのか良く分からない。
早朝、横浜の町を一人で彷徨い、始発に乗って家に帰り、悪かった事を手紙に書き許しを願ったが、由美子は許してくれないだろう。考えが甘かった。
家を捨て、子供達も捨てた女、長期の家出、これで二度目だ!
一度目の時も、子供達を残して姿を消し、ようやく見つけたと思えば多額の借金をしていて、その時は、実家の母に借りて何とかしたが、今度は百万円ちかくの借金、もう手に負えない。
どうして借金の好きな女なのだろう?
子供達の事は考えないのだろうか?
横浜での出来事が頭から離れない、私が悪い、確かに悪い!
今日は、何だか仕事をする気がなく休んでしまった。
由美子と結婚して、これで二度目の暴力、これがもう最後だ!
めったに手を挙げた事のない私だが・・・・・
無理かもしれないが、私は由美子の事を忘れる努力をする。
もう結婚もしない。
子供達の幸せだけ祈って生きて行く。
けれど、どうしたら子供達と一緒に生活出来るのだろうか?




