最後の弁当
母が作ってくれた弁当も今日で最後、色合いは地味だが最高に美味しい弁当だ。
今、一人で弁当を食べながらラジオを聴いている。
ラジオからは、海の思い出をテーマに話していた。
美しい詩など聴いていると涙が出てきて、可愛い子供達のことを思い出す、出来るなら苦しみや悲しみや喜びを共にしたい。
ラジオを聴きながら、ふと そんな事を考えているうちに、また涙が出てきて、胸がつっかえて弁当が食べられない。
泣きながら、また詩を聴きながら考える。
今の仕事を辞めて海の側で働こうか?
海を見ながら働き、子供達と一緒に楽しく生活するなんてのもいいなぁ。
海といえば、海で青春の全てをかけてきた。
今こうして思い出すと、船に乗っていた時も楽しかった。
可哀想な二人の子供達、小さな頃から父子家庭にさせてしまい本当にすまないと思っている。
しかも明日には、お袋がいなくなる。
病院の先生から「疲れが溜まっているから無理しないように」と言われ、具合が悪いながらも五ヶ月も子供達の面倒をみてもらった、しかし母も限界だったようだ。
こうなっては子供達を施設に預けるかどうするか考えなければならない。
悩んで悩んだ末 辛い覚悟を決めた・・・・・
子供達と一日も早く暮らす事を夢見て、一生懸命に働く。
元気で居てくれ、素直で明るい子に育ってくれ。
これが希望だ。
浩一・真由美 本当にすまない。




