真由美の火傷
海上自衛隊二等海士 第九護衛隊 護衛艦あまつかぜ
早くも除隊してから7ヶ月の月日が過ぎた。私は月日が流れるのが、このように早いものだとは思わなかった。日進月歩のこの世の中なのに私は、何で前に進まないのだろう?けれども自分自身の事を考えると海上自衛隊に入隊前の私と除隊後の私は、まったく変わっていない。変わっているのは幾つか年を取ったと言うだけで、その他は何も変わってはいない。私は一生を通じて一番面白い時期、青春を海と船に費やしてしまったが今でも後悔はしていない。海の素晴らしさ、美しさ、雄大さを目の当たりに見てきた。
それから1年、海から上がった一人の男が居た、夜の街に一人の女が居た。その一人の男と一人の女が出逢い恋をした。そして一緒に生活するようになり、やがて結婚 そして男の子が生まれた、ごく当たり前の家庭である。それから2年、女の子が生まれた。
子供第一に考えて、その父親は仕事に励んだ。しかし母親の考えが少しずつ変わってきた、父親はその事に気が付かなかった。妻を愛し子供達を愛し一生懸命、仕事に打ち込んだけれど、この子供達の母親は平凡な生活、毎日変わらない一日、そして育児とそのような事に少しずつ飽きがきて、何か変わった事を求めるようになった。そのような事に、もう少し早く気が付けば良かった。愛していればこそ少しでも多くのお金を家に入れる事だけを考え仕事、仕事、仕事にくれ妻の事は考えなかった。妻を信じ妻を愛してればこそ働いて働いた。男は家族の為に仕事を第一番に考えていた。それは今も変わらない。
男から仕事を取ったら何が残るのだろう?妻が家をしっかり守っているから男は外で力一杯働けるのだと思う。それから、その父親は二人の子供をかかえて地獄の一丁目を彷徨う。
二人の最愛の子供は・・・・・・
私は佐山孝。
妻・由美子 息子・浩一(五才) 娘・真由美(三才)の四人暮らし。
平凡であるが毎日楽しく過ごしている。
さぁて!今日は暇だから溜まったゴミでも燃やすかな~。
そんな事を思っていつもの焼却炉代わりのドラム缶を用意しゴミを入れて火を点けた。
庭で遊んでいる浩一と真由美
「お前達、危ないから絶対に火の周りでふざけたりするなよ」
『はーい』
念を押し注意した。
浩一は、火を見て興奮したのか騒いで踊っている。
『浩一!そんな近くで危ない!』
真由美は、ドラム缶の前に座り、ドラム缶に開けた穴から見える火をジーっと見つめている。
次のゴミを入れようと目を離した時だった
浩一が真由美の背後から
『ワァー』
と脅かた、驚いた真由美は
『ギャーーーーーッ』
振り向くと、真由美が泣き叫んでいる。
浩一が真由美を後ろから脅かしたものだから、真由美がドラム缶に抱き付いてしまい、手の平と腕などに火傷をしてしまった。
「浩一、お前は!」
浩一は母親にこっぴどく叱られて泣いている
私はあわてて水で冷やし、その足で病院に連れて行き、火傷の処置をしてもらったが、もしかしたら火傷の跡が残るかもしれない、二週間は通院が必要と言われた。
真由美は女の子だし、火傷の跡が残らず綺麗に治るといいな。